゜《加賀見side》



「それでですね、今日詩織ちゃんと一緒にお昼ご飯食べたんですけど、詩織ちゃんのお弁当すっごく美味しそうでびっくりしたんです! だってお弁当にローストビーフなんてうらやましすぎないですか?」




お茶会からしばらくが経った頃。

いつもの旧視聴覚室で、川咲はできたばかりの友人のことを楽しそうに俺に語って聞かせていた。


歳の割に大人びて見える彼女がこうして無邪気にしゃべっているのを見ると、不思議とこちらも楽しい気持ちになってくる。




「そうか、笹塚詩織と気が合ったみたいで良かったな」


「はい。それに詩織ちゃんと一緒にいるおかげで、他の子とも前より話せるようになってきて……」




楽しそうに話していたはずの川咲だったが、ふと何かに気付いた様子で言葉を切った。

そしてにわかに居心地の悪そうな表情になる。




「あの、先輩」


「ん、どうかしたか?」


「もう一時間近く経ちますけど」


「?」


「手ですよ、手」