そういえばこの人、この学園の生徒のこと全員把握してるんだったっけ。
改めてその凄まじい記憶力に舌を巻く。
……だけどその情報、どのあたりが私へのお礼なんだろう?
そんな若干の疑問を抱きつつ、私はお茶会会場に戻ってきた。
先ほどの騒動は既に忘れられたらしく、この場は相変わらず楽しげな空気で満ちている。
紅茶まだ残ってるかな、とテーブルを覗き込んだ。
──そのとき。誰かが私の肩をトントンと叩いた。
「あのっ!」
「え? ……あ、さっきの」
黒いセミロングの髪をハーフアップにした、気の弱そうな女の子。
数分前に教えてもらったおかげで、すっとフルネームが出てきた。
「笹塚詩織さん?」
「……! うん! そうです! わ、知っててくれたんだ」
「ま、まあ」
付け焼き刃の知識ですが! 医者一家の次女なんですよね!
「えっと、貴女は川咲瀬那さん……ですよね。特待生の」