「どうしてだろうな。何故か川咲はどこにいてもすぐに目に入ってくるんだよ」
「まじですか……」
まあ、私も加賀見先輩のことが心配でつい見てしまっていたからお互い様か。
先輩は先輩で、友達のいない私のことを心配してくれていたのだろう。
「お茶会も残りあと20分といったところか。俺はもうこのままこの辺りで休ませてもらうことにする。川咲はどうする?」
「ああ、私は……」
時計を確認した先輩から聞かれて考える。
そういえば、紅茶のお代わりもらいにいこうとしてたんだっけ。
「じゃあ、せっかくなのでギリギリまで普段味わえない高い紅茶を楽しむことにします」
「そうか、そうしてくれ。……あ、そうだ」
歩き出しかけた私を、先輩は何かを思い出したように呼び止める。
「助けてもらったお礼に一つ教えておく。さっき転んで俺に紅茶をかけた女子生徒の名前は、笹塚詩織。川咲と同じ一年で、クラスはC組。代々優秀な医者を輩出してきた笹塚家の次女だ」
「へえ」