「シャツ、替えたら汚れた方貸してくださいね」


「……わかった」




お茶会会場を脱出した私は、校舎内の手洗い場で、宣言通り加賀見先輩の制服の染み抜きに挑戦していた。

本当は歯ブラシみたいなもので叩くと良いけど、あいにく染み抜き用の歯ブラシなんて手元にないので、水に濡らしたハンカチを使って拭き取るくらいしかできない。




「すみません、これで限界です。やっぱりちゃんとクリーニングに出してください」


「わかった。……さっき、助けてくれたんだよな。ありがとう」


「フォローするって約束でしたから。余計なことをしてしまいましたかね」


「いや、正直助かった。かなり気を張っていたから、紅茶も茶菓子もろくに味がしなかったよ」




加賀見先輩は疲れたように苦笑いする。




「川咲こそ、何人かに声を掛けようと頑張ってたな」


「うっ、見てたんですか……?」




確かにたくさんの人に声を掛けようと挑戦はしていたけれど、ことごとく上手くいかなかったので、それを見ていたと言われると恥ずかしい。