まずい。思いがけず女子に近づかれた加賀見先輩の顔色が悪くなってきている。
もともと女子も多い空間にいたのに、さらにこの女の子に触れられでもしたら、また倒れてしまうのでは。
加賀見先輩のお友達、天ヶ瀬先輩は他の女子の相手をしていて、フォローに回れそうにない。
「ま、待って!」
私は無意識のうちに声をあげていた。
転んだ女の子を始め、周りの人の視線が一気に集まる。
うわ、どうしようかこの感じ。
もういい。なるようになれ。奥義・自棄。
「その子、私が全力でぶつかったせいで転んだんです! だから加賀見先輩の制服はこの手で責任持って染み抜きします! 庶民の知識フル活用してばっちり綺麗にするのでどうかご心配なく!! 先輩はこっちに! ほらさっさと歩いてください!!」
「あ、ああ……」
勢いまかせにまくし立てて、啞然とする加賀見先輩をどうにか連れ出す。
背中にたくさんの視線を受けながら、それをなるべく気にしないように走った。