「綺麗って言いました? 私の髪を?」
「ん? ああ、言った」
「女性恐怖症なのに、そういうこと言うのは抵抗ないんですか?」
「そういうこと、とは?」
「だから、綺麗、とか……。女子をそうやって褒めることです」
「俺は思ったことを言っただけだ。女性恐怖症は関係なくないか?」
そう言う先輩は心底不思議そうだった。
わ、わからん! この先輩の感覚がわからん!!
「ち、ちなみに!」
謎の気恥ずかしさでいっぱいになった私は、そこまで良い思い出のなかった栗色の髪を軽く撫でてみたりしながら話を逸らした。
「この学校って髪染めるの禁止じゃないんですか? 中学のときはしょっちゅう呼び出されては地毛だって説明させられたのに、ここでは怒られたことないんですよね」
「ああ、服装なんかの規定は少ないと思う。それでも明るく染めたりアクセサリーを付けたりしている人が少ないのは、校則というよりは家の方針だろうな」
「ほお、そういうものですか」