「女子に触れているのに、多少気分が悪くなる程度で倒れない……やっぱりこんなの奇跡としか思えないな……」
「そりゃ良かったです」
「あ、川咲。その問題集の問5、途中式三行目計算ミスしてる」
「私に言わせれば、一瞬ちらっと見ただけで間違い見つけられる観察力と頭脳の方がよっぽど奇跡だと思いますけど!」
先輩が来る前まで解いていた、全然計算が合わなくて困っていた一問。
くっ……私めっちゃ考えたのに! この類まれなる天才め!!
やっぱり加賀見律弥というこの男、極度に女性を恐れていること以外は全てが完璧なのだ。
裕福な家に生まれて才能にも溢れているなんてうらやましすぎる。
私が嫉妬のこもったじとっとした視線を向けると、先輩はまだ辛そうに深呼吸を繰り返していた。
……前言撤回。ここまで苦しんでるところを見るとやっぱあんまりうらやましくない。
何にせよ、今日のミッションは無事にクリアしたということで。