「俺の彼女になってもらいたい」


「言い直さなくたって聞こえてますよ!? 聞こえた上で理解できてないんです!」


「そんな難しいことを言ってるつもりはないが……」


「今日出会ったばかりの人を相手にする要求ではないって言ってるんです!」




私の剣幕に圧されたのか、先輩は座ったままちょっとのけぞって苦笑いする。

その体勢のまま説明を続けた。




「恐怖症を治すには、恐怖を感じる対象のうち、恐怖の程度が小さいものから徐々に慣らしていくという方法が効果的なんだそうだ」


「ああ……確か暴露療法とかいうんでしたっけ」


「よく知っているな。……だけど今まで、この治療を実践しようにも、そもそも他より恐怖を感じない女性というのが周りにいなかった。ここまで近づいて平気なのはあんたが初めてなんだよ、川咲」




私は先輩は真剣な眼差しを受けて曖昧にうなずいた。



な、なるほど。

とりあえず私は先輩にとって、何やら貴重な存在だということはわかった。