なるほど。でもそれにしたって、すごい記憶力だ。
そして名家の御曹司というのはやっぱり大変なんだな。
さて、納得したところで。
「それで、私に頼みたいことっていうのは?」
「ああ、そのことだが……」
加賀見先輩は前のめりになって、じっと私の目を見つめた。
近距離でここまでの美形に見つめられてはさすがに緊張する。
「恥ずかしながら、俺は女性恐怖症なんだ」
ごくりと唾を飲み込んだ私に、先輩は重々しい声で告げた。
一瞬意味がわからなくて、パチパチと数回まばたきする。
「ん、女性恐怖症?」
「女性に近づくと震えや冷や汗が止まらなくなる。小さな子どもや祖母ぐらいの世代だと比較的平気なんだが……」