転んだときに付いた傷の手当をした方が良い。先生に言われて、私たちは保健室へ移動した。


最初に校舎見学をしたときにも思ったけれど、やたら広い保健室だ。

設備がどう見ても最新で、保健室というより最先端の病院のよう。


付き添っていた先生(ちなみにこの先生、養護教諭だと思っていたけど実はこの学校専属の医者らしい)は手当てを済ませると仕事場へ戻っていき、私と先輩は窓際の面談スペースのような場所に座った。




「川咲瀬那……ええと、川咲と呼んで構わないか?」


「はい、お好きなように。……ていうか私、名前言いましたっけ?」




さっきから少し気になっていた。

名乗った記憶はないし、先生も私のことは「川咲さん」としか呼んでいなかったように思う。


私のそんな疑問に、先輩は事もなげに言った。




「ん? ああ。この学園の生徒は全員名前と顔を把握しているから」


「ぜ、全員!?」


「この学園にいる人間は将来付き合いが続くやつらが多いから、一人一人きちんと覚えておいて損はないんだよ」