周りの景色がスローモーションで流れたと思うと同時に、どすんと地面に叩きつけられる。


最悪だ。

でも何か違和感があった。

何故か思ったよりも衝撃が弱いのだ。



ううう……と呻きながら、そーっと目を開ける。




「あ」




目の前に、どアップの黒髪イケメン。

一瞬訳がわからなかったけれど、どうやら私は加賀見先輩に覆いかぶさるようにして転んだらしい。先輩がクッションになってくれたわけだ。



わあ、綺麗な目。


目の前に綺麗な顔があるせいで、無意識に観察してしまう。

真っ青な顔も虚弱体質の儚げ美青年みたいに見えるから、顔が良い人ってやっぱ得だ。




「加賀見君、大丈夫か? 川咲さんも!」




後ろで、先生の焦った声がした。

転んだ私への心配が後なのか。別に良いけど。




「え? あれ?」




加賀見先輩は、何やら呆然とした様子で口をぱくぱくさせている。




「どういうことだ……こんなに近づいてるのに……気持ち悪くない……」




加賀見先輩は、信じられないといった様子で、私の顔をじっと見つめる。