「加賀見君落ち着いて。深呼吸して、ほら」
「うっ……」
「そうだ、空。空を見なさい。大丈夫、視界に入らなければ存在しないのと一緒だからな」
先生は顔色の悪い加賀見先輩を一生懸命なだめはじめる。
その様子に、私はとんでもなく不安に駆られた。
「あのう、大丈夫そうですか? 私に何かできることとか……」
「そうだな、川咲さんは早急に立ち去ってもらえると助かるかな!」
「へ? あ、はい。了解で……す……」
わけのわからないまま、私は焦って方向転換をする。
そう、焦ったのが良くなかった。
焦りは何一つとして良い結果を生まない。いついかなるときも、落ち着きを保つことは大事。
「あっ」
私の右の足首は、あらぬ方向にぐきっと曲がった。
倒れそうになるのをどうにか堪えようと、左の足で三歩分ぐらいぴょんぴょん跳ぶ。
だけど無慈悲にも、それで体勢を立て直すことはできず。
「ぎゃん」