「特許はこれで解決だな」
「内海部長から先ほどメールがあり、綾小路商事が作った商品は欠陥があり自主回収になったと連絡がありました」
 詳細はこちらですと夏目はモニターに自主回収のお詫び文を表示した。

「発火の恐れ?」
「……そういえば、第1開発部の吉田くんがこのままでは電池に熱が籠ってしまうと悩んでいましたよ?」
 この商品は吉田くんのですよね? と木村は数ヶ月前の記憶を辿った。

「問題が解決していなかったから製品にはしていなかったということか」
 それを知らずに先に商品を発売して喜んだ綾小路商事の悔しがる顔が見られそうだ。
 馬鹿な奴らだと彰は鼻で笑う。

「実は福岡にこの電池の問題を解決できそうな案があって、ちょうど吉田くんに連絡しようと思っていたんです」
 すぐに改良してこちらも製品化しましょうと言う木村の頼もしさに、元上司の林田部長は「惜しい人材を出してしまった」と嘆いた。

「林田部長、木村室長、あと内海部長の三人に、特許と製品化の件を任せて良いか?」
「もちろんです、西郷CEO」
「福岡から一人エンジニアを呼んでも良いでしょうか?」
「必要なだけ呼べ」
「ありがとうございます!」
 特許問題もなんとかなりそう。
 先に製品化されてしまった物も、今から製品化を目指しても大丈夫そう。
 残る問題は誰が情報を流したか、だけれど。