営業部はもちろん、第1~第3開発部の各部長も賛成し、すぐに特別共有フォルダが作られることが決まった。
 社員全員に自社製品を知ってもらいたいと、全社員が閲覧可能なフォルダに。
 ただしデータは閲覧のみ、複製も書き換えも不可という制限をかけることにした。
 
 共同製作を申し出たり技術的な問い合わせをしたり、製品紹介だけでなく他の用途にも活用されることになり、社内で協力し合う雰囲気が生まれ、以前よりも活気あふれる会社になったと思った。
 第2開発部の林田部長から信じられない言葉を聞くまでは――。
 
「……特許を先に取られた?」
「どういうことですか? 林田部長」
 西郷CEOに相談するために統括室へやってきた部長に美沙は尋ねた。

「福岡に転勤になった木村くんがやっていた、あの案件だよ。佐藤さんも知ってるアレだ」
「先に特許を出した会社はどこだ? 内容は?」
 これですと部長が差し出した資料に西郷は目を見開いた。

「綾小路商事……」
 申請者は綾小路商事の孫娘、麗香だ。
 
「すぐ木村にこの資料を送って、特許部分が本当に先を越されているのか確認してくれ」
「はい、西郷CEO」
 すぐに連絡しますと退室した林田部長と入れ違いで入ってきたのは、第1開発部の内海部長。

「……まさか」
 内海部長が持ってきた書類は特許ではなかったが、類似商品を綾小路商事が発売したという記事だった。

「どうして……?」
 綾小路商事は先日レストランで会った人たちだ。
 どうしてあの人たちがこの会社の製品を真似できるの……?