どういうこと?
 お支払いは?
 セレブは支払いをしないってこと?

「よくお似合いですよ」
「あの、夏目さん。これは一体……」
 車のドアを開けてくれた夏目にどういうことですか? と聞こうと思ったのに、美沙は彰に引っ張られ車の中に。
 ドアはパタンと閉められ、聞きそびれてしまった。
 
 車の外では夏目が店員から美沙のカバンと紙袋を受け取っている。
 あ、着てきた服!
 もしかしてあの紙袋に?
 受け取った荷物をトランクへ入れた夏目は、普通に運転席に座り、車を動かした。

 ……これはどういう状態なのだろうか?
 なぜ彰様に肩を抱き寄せられているのだろうか?
 こういうことは恋人とするものでは?
 いや、恋人でもなかなかしないな、車の後ろに二人で座ることなんてないもんね。

 薄いショールのせいか、彰様の手の温かさを感じてしまった美沙はどうしたらよいのかわからず固まった。
 とりあえず心臓がバクバクしすぎだし、顔から火が出そう。

 車はすぐに地下駐車場へ。
 そして夏目を先頭にエレベータに乗り込み、最上階のレストランへ連行される。
 その間もなぜか彰様の手は私の腰だ。
 くすぐったくて恥ずかしい。

「ご来店ありがとうございます、西郷様」
 深々とお辞儀をしている黒服の男性の奥の景色は見たことがある。
 テレビで、そうつい先日見たばかりの隠れた名店、一日限定三組の店だ。
 こんな店には一生縁がないなと、お肉が美味しそうだな、景色を見ながらワインなんてセレブだなって妄想を繰り広げた店!

「いってらっしゃいませ」
 え? 夏目さんは一緒に行かないの?
 なんで? どういうこと?

 このドレスはこの店に入るため?
 普段着では入れないセレブな店だから!
 
 住む世界が違いすぎる……!