「お嬢様は肌が白いので、なんでもお似合いです」
「そうか」
「オーダースーツとフォーマルは一週間後に納品いたします」
 西郷はぐるっと周りを見渡すと、棚に置かれたショールを指差した。

「あれも」
「このドレスになら、お色はこちらですね」
 白から紫へのグラデーションが美しいショール。

 待って、これ色違いをテレビで見たことある!
 有名な女優さんが付けていたブランドのショール!
 このショール、私の給料より高かったはず!

「あとドレス数点と小物を適当に頼む」
「かしこまりました」
 お嬢様に似合うドレスを納品しますと店員は微笑んだ。

「あの、西郷CEO」
「美沙、呼び名」
 待って、待って、待って!
 なんで私の名前が呼び捨てになっているの?

「彰様、あのこんな高級なドレス、私ではお支払いが……」
「必要経費だ」
 気にするなと口の端を上げた彰の顔は、まるで黒豹のようだった。
 経費って、印刷用紙とかクリップとかじゃないの?

「ひあっ」
 スッと腰に添えられた手に美沙が思わず声を上げる。

「女性にそんな反応をされたのは初めてだ」
 ククッと笑いながら、でも美沙の腰を離す気がなさそうな彰は、支払いも何もなくそのまま店を出た。