「あら? 胸はわざと潰されていますか?」
 もったいないと言う店員に美沙は微妙な笑顔を向けた。
 この胸はコンプレックス。
 身長で選ぶと胸が入らず、胸で選ぶと脇がダボダボで変になる。
 だから小さめのブラで押し潰すのが普通になってしまっていた。

「こちらを試していただけますか?」
「い、いえ、下着は……」
 下着はこのままでいいですと断りたかったのに、有無を言わせぬ圧力でどんどん剥ぎ取られていく。
 高級ブティックって怖い!
 美沙は着せ替え人形のようにどんどん服を着せられた。

「よくお似合いですよ」
 女優ですか? と聞きたくなるような綺麗な薄紫のドレスはデコルテが開いているが、いやらしい印象ではなく、シンプルなネックレスが上品さを引き立てている。
 コンプレックスだった胸はスッキリと。
 まるで魔法にでもかかったかのようだ。

 髪もハーフアップにされ、軽くメイクも直される。

「あの、先ほどはスーツとフォーマルと……」
 友人の結婚式に着るにはステキすぎるドレスなんて、どこに着ていくの?

「では西郷様をお呼びします」
 あっという間に開けられた扉から西郷が入ってくる。
 美沙を上から下まで眺めると、西郷は満足そうに目を細めた。