「……ヴィクトル。今、大変なはずだ。デストレ辺境伯の君が、何故ここに居る?」

 信じられないと言わんばかりな表情の王子様リアム殿下は、私が転んで伏せていた短い間に階段を下りていた。

 私にとっては初対面に近い人なので、ここでどんなに嫌われていたり恨まれていたりしようが、心は痛むはずはない。だって、婚約破棄済みだし、好かれることはないと言い切れる。

 正直、美形王子様で、目の保養で素敵ー♡ とは、なってしまうけど、芸能人と一緒で、顔と名前を知っているだけだもの。