「ふん。その強気はレティシアに記憶が戻れば、すぐにフラれて終わる。覚悟しておけ」

「……記憶が戻る前にだって、彼女を落としても良いですよ。皇太后の問題が終わるまでは、どうせ全てを明かせないんですから」

 ヴィクトルの言う通りに、私は皇太后が生きている間は、元婚約者リアム殿下と結ばれることは難しいもんね……。

「お前……ふざけるなよ?」

「何をどう言い訳しようが、現在の二人は婚約破棄した王太子とされた公爵令嬢であることをお忘れなく?」

 肌がピリつく一触即発な慣れない状況に、恋愛未経験喪女だった私は逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。

 しゅっ……修羅場ー! ここまで私視点で何の悪いこともしていないんだけど、何だか浮気していたような気持ちになるのは何故ー!

 っていうか、私を原因に喧嘩してる二人とも、好みの容姿過ぎて取り合われるとか、右と左に違う沼に片足ずつ突っ込んでるみたいになるから止めて欲しい。

 これはどちらかを選び難いし、これまでの記憶がないから、判断出来ない状況なの!

「わっ……私、記憶戻るまで、誰とも結婚しません!」