「お前の城に……俺の婚約者が、不当に閉じ込められていると言うのに、何故その状況で諦められると言うんだ。ふざけるなよ」

 私はリアム殿下から慌てて離れて、そんな私たち二人をヴィクトルは冷静に見ていた。

「既にレティシアは、貴方の婚約者ではないですよ。殿下。それはお忘れなく。それに、ここに滞在しているのは彼女の希望です」

 二人は真剣な眼差しで睨み合い、私はとても居心地が悪かった。いいえ。私は浮気はしていない。記憶を失った上で、色々と勘違いがあっただけで。

「俺はもう何もかも、わかっているぞ。お前……レティシアが記憶を失っている事情を知りつつ、利用したな?」

「……いいえ?」

 詰め寄るリアム殿下をいなすように、ヴィクトルは軽く微笑んだ。

「嘘を言え。お前はレティシアをよく知る幼馴染だと言うのに、彼女の記憶喪失を指摘できないはずがない。どうして、嘘をついたんだ」

「え。幼馴染? そうなの?」

 ……ヴィクトルって、私の幼馴染だったの? どういうこと?