ひーっ……嘘でしょう。リアム殿下の顔が良過ぎて話が入って来ないのかと思ったら、甘い言葉の相乗効果で致死量のときめきが体内に注入されて、美形な王子様に殺される。

「ごっ……ごめんなさい」

 安易に謝れば良いってものでもないけど、混乱した思考回路は、謝罪とときめきを行ったり来たりする進路を固定されてしまっていて、私はここでは謝るしか出来ない。

「いや……俺が祖母の要求を跳ね除けられなかったのが、すべて悪いんだ。悪かった。年齢を重ねたせいで、こうしろと言い出せば誰の意見も聞かないんだ。どちらにせよ、もう命は長くないと思われるし、俺は……」

「リアム殿下。驚きましたよ。王太子があの高い壁を単身登られたんですか。盗賊にでも職を変えた方が良くないですか。その身体能力があれば、どんな邸にでも侵入出来ますよ」

 いきなり低い声が聞こえて振り向くと、なんと……そこに立っていたのは、迫り来る魔物の対応に追われて多忙のはずのヴィクトルだった。