「ごめんなさい……私、もし必要な手続きがあるのなら、ちゃんとします」

「え?」

 そう言えば、リアム殿下は婚約破棄した後に、罪を犯した私と話があると言っていたような気がする。

 けど、私は前世の記憶を取り戻したばかりで、彼に対し失礼なことをしてしまった。

「リアム様には、愛する人が居るんでしょう? だと言うのに、元婚約者の私を追い掛けるなんて、きっと……何か重要なお話が、あるんですよね?」

 リアム殿下は私の言葉を聞いて、暫しぽかんとしていた。超絶美形な王子様のぽかん顔って、とても珍しいよね。結ばれることのない元婚約者だけど、目の保養には変わりないわ……。

 私たちはしばらくお互い違う意図で見つめ合い、はっと我に返ったリアム殿下が片手を上げて首を横に振るまで続いた。

「いや、待て……待て待て待て。レティシア……君は記憶がなくなっているんだな。やはり、そうだったのか。ヴィクトルに操られるような、おかしな術でも使われたと思っていたが」

 記憶がなくなったことに、気が付かれた? それはそうだよね。実際ないし。

「きっ……記憶に混乱があることは、その通りです」