邪魔者の婚約者と婚約破棄して、ようやく好きな女性と結ばれることが出来るようになった彼が、どうして……こんな王都から遠い辺境のデストレに居るの?

 リアム殿下はヴィクトルと話をして、やがて諦めたのか、臣下数人を連れて引き下がって行った。

 その日の夕食時にも、ヴィクトルはいつも通りで私に誰が来たとか、何も言わなかった。

 彼の態度を見るに……もしかしたら、リアム殿下は私がここに来てから、会いに何度も来ているかもしれない。

 元婚約者の私に、会いに来たのは……どうして?

 リアム殿下は、明確に婚約破棄を言い渡したはずなのに。

 うーん……婚約破棄したものの、やっぱり君が好きパターン? 後になって、後悔したとか……。

 けど、もしそうならば、ヴィクトルが私を助け抗議したあの時に、それを種明かしされてないとおかしいよね。

 だって、私はデストレ辺境伯ヴィクトルの未来の結婚相手としてここに来ている訳で、それを理解しているならば強硬に止めるはずだもの。