それって、メイドの中での一番上の人のような気がするけど、なんせこの世界も貴族も常識が分からないし、余計なこと言わず、はいはい言って切り抜けよう。

「ヴィクトル様が、朝食を共にと……レティシア様が、移動に疲れてお疲れのようでしたら、そのようにお伝えしますが」

「だっ……大丈夫です!」

 慌てて頷いた私に胡乱げな視線を向けつつも、彼女は手をパンパンと叩き、それを合図に数人のメイドが私の部屋へ入って来た。

「それでは、これから湯浴みと着替えを……それで。よろしいですね?」

「はいっ……」

 私は昨夜の夜会からずっと着ていたドレスを脱ぎ。コルセットを外してもらい、それでも今まで苦しくなかった自分が不思議だった。

 この体が……窮屈な格好に、慣れ親しんでいるせいかしら?

 浴室で磨き上げられ、装飾の少ないデイドレスに着替えると、食堂へと案内された。

 忙しそうに書類を見ていたヴィクトルが私を待っていたとするなら、かなり長い時間待たせてしまっていたはず。けど、彼はそんなことをおくびにも出さずに立ち上がった。

 私が空いている席へと腰掛けると、彼は嬉しそうに微笑んだ。