あまりに話が早すぎるのが少し不安だけど、結婚って好きの度合いよりも、必要性とタイミングって言うし……何より、私がヴィクトルが好み。

「けど……その、私の両親の許可が」

 懸念事項として真っ先に浮かんだのが、これ。記憶を取り戻した私も会ったことのない両親にも説明が要るのではないかと問えば、ヴィクトルはにっこりと微笑んで言った。

「安心してください。ルブラン公爵は、父の代から懇意にして頂いています。きっと、殿下から婚約破棄されたから、顔を合わせるのが憂鬱なんでしょう」

「はい……その通りです」

 政略結婚なのに、先方からの婚約破棄されるって、両親には絶対に怒られると思う。

「後で僕の方から全て説明しますので、レティシアは何の心配も要りません……すぐに、僕の領地に発ちます。ゆっくりと、そちらで傷心を癒やしてください」

 実はこれまでにレティシアとして過ごした記憶がないので、婚約破棄された後で、両親にもどう説明しようと心のどこかで思っていた。

 あんな風に婚約破棄されたくらいだから、絶対にヒロインに悪事を働いていると思うし……言い訳しようにも、記憶がない。