「それで、さっき……リアム殿下も辺境伯のヴィクトルが、この城に居たことに驚いていたんですか」

 二人の会話の中で、私が不思議だなと思っていた部分の謎が解けた。ヴィクトルはいつもここに居ないから、何故ここに居るとリアム殿下に質問されていた。

「そうです……僕と一緒に、デストレまで来てくれますか。レティシア。君は婚約破棄されていれば、社交界での目は自ずと冷たくなりますが、僕の居る辺境に居れば、彼らとほぼ会うことはありません」

 えっ……何。私にとって、都合良すぎて怖い。

 そうだよ。ヴィクトルに辺境に一緒に連れて行ってもらえれば、さっきリアム殿下に、王族に婚約破棄されたという貴族令嬢としてのデメリットが、これで全部消えてしまう。

 そして、ヴィクトルの妻である辺境伯夫人として、確固たる地位が築けるという、そういう好条件の提案だった。

 これは、乗るしかないビッグウェーブだよね? 自然と喉が鳴った。

 ヴィクトルは婚約破棄直後に転んでしまった私を助けてくれて、こうして愛の告白もしてくれた。誠実だよね。ちゃんとしてるっていうか。