というか、いけない。このままずっと見るだけでいられそうだけど、ヴィクトルさんは、私の反応を待っているみたいだった!

「あ……あのっ、ごめんなさい……初対面なのに、こうして助けて頂いて……ヴィクトルさんが居てくださって、本当に助かりました」

 美男が間近なシチュエーションへの緊張のあまり、私がたどたどしく感謝の言葉を伝えると、ヴィクトルさんは不思議そうな表情をしてから頷いた。

「……? ああ。レティシア。僕のことは、ヴィクトルと。君の方が身分は上なので……しかし何故、君がリアム殿下に、婚約破棄されることになったんですか?」

 ん? あ。私……つまり、レティシアが属するルブラン公爵家より、ヴィクトルさんのデストレ辺境伯家の方が、格下になってしまうって話なのかな?

 公爵家って王家の血筋が入った最上位爵位だから、そうなっているのかもしれない。自分の死因もわからないうろ覚え現代知識によると、きっとそう。

 それに……うんうん。ヴィクトルだって、婚約破棄されるなんて、どうしてって思うよね。

 婚約破棄された理由、とても気になるよね……私だって、実際のところ、気にはなってる。普通に覚えてないし。

 けど、大丈夫。

 よしんば記憶がなかったとしても、悪役令嬢が婚約者の王子様から婚約破棄される理由は、大体、この理由一択だから。