「できてたよ、瞬間移動。
 碧音(あのん)ちゃんと凪くん。
 直接見たから」

「うん、
 見た、俺も。
 凪っちと楚良(そら)ちゃん、
 できてた、瞬間移動」

「碧音ちゃんが階段から落ちてしまったとき、
 すかさず凪くんが碧音ちゃんのことを助けに行ったの」

「そのときの凪っち、
 ものすごいスピードだった」

「うん、
 本当にすごかった、
 凪くんのスピード。
 そのおかげで
 碧音ちゃんが廊下の床に叩き付けられる前に
 凪くんが碧音ちゃんのことを抱きかかえることができた」

「そのときだよ。
 凪っちと楚良ちゃんが
 瞬間移動したのは」

「瞬間移動できていなかったら、
 碧音ちゃんと凪くん、
 無傷ではすまなかったと思う。
 だから、
 本当によかった。
 碧音ちゃんと凪くんが瞬間移動できて」

彩暖(あやの)の言う通り。
 本当によかった、
 凪っちと楚良ちゃんが無事で」


 彩暖ちゃんと新堂くん。
 聞いた、二人の口から。

 それでも。
 湧いてこない、実感が。


 それだからだろうか。

 彩暖ちゃんと新堂くん。
 二人の言葉に。
 出てこない、言葉が。