「マユ。好きだよ」

カズが、言った。


「どうしたの急に」

マユが切り返した。


「ただ、言っただけ」


「なにそれ・・・」






「マユ。綺麗だね」


「そう?」


「ただ、言っただけ」





「マユは、頭が良いね」


「どういう所が?」


「ただ、言っただけ」




「マユは、性格がいいね」


「そう?」


「ただ、言っただけ」




「マユといると楽しいね」


「私もカズといると楽しいわよ」


「ただ、言っただけ」




「マユの瞳は、太陽に輝く川のせせらぎみたいだね」


「ありがとう」


「ただ、言っただけ」




「マユは、料理が上手いね」


「嬉しいわ」


「ただ、言っただけ」




「マユは、家族思いだね」


「だって、家族は大切だもの」


「ただ、言っただけ」





「マユは、親切だね」


「そうかしら」


「ただ、言っただけ」








「マユ。宇宙一好きだよ」


「ほんと?」


「ただ、言っただけ」











「今、言ったことは全部うそだよ」


「どれが嘘なの?」


「ただ、言っただけ」











「カズ、本当は、どうなの?」


「なにが?」


「私のことどう思っているの?」


「それは・・・」


「それは?」


「もちろん・・・」


「もちろん?」


「ただ・・・言っただけ・・・」


「なによ。それ・・・」


「そう思う?」


「そう思うわよ」


「なぁ、マユ。いつか・・・」


「いつか?」


「一緒に暮らそう」


「ほんと?」


「ただ、言っただけ」






夕陽が、穏やかに落ちていった。