私の腕に唇をはわせたまま、鋭い瞳で私を見つめないでってば。



 「心臓……苦しいから……」


 「妃奈はもっと俺に可愛がってほしいんだよな?」


 「えっ、そんなことないよ」


 「ウソだ。妃奈が俺を求めてることは、お前の甘さでわかる」


 「私の甘さ?」


 「気づいてないだろうが、妃奈が幸せを感じれば感じるほど妃奈の糖度は増すんだ」



 ししっ知らないよ、そんなこと。

 自分のことなのに全く。

 私がケーキだってことも、高校の入学式の日に東条君に言われて初めて知ったんだよ。




 東条君がいきなり立ち上がった。

 差し出してきた手を、私は戸惑いながらも握りしめる。



 ソファに座らせるように私の上半身を起こしてくれたけれど、これは彼の優しさじゃない。

 私を味わいやすくするための、捕食体勢で間違いない。