「赤点をとった後輩の勉強を見てあげたんだってな。俺のチームの奴らが、わかりやすかったとはしゃいでいた」

 
 「補習中の教室の前を通ったら、黒板の前に立っていた妊娠中の先生が、お腹を押さえながらうずくまっちゃったの」


 「それでわざわざ、放課後に先生の替わりをしたのか?」


 「補習のために席に座っていた生徒たちが10人くらいいて。どう行動するのが正解かわからなくて。先生変わります!ってとっさに。でも今は反省しているの。本当だったら生徒たちじゃなくて、痛がっていた妊婦の先生をフォローしなきゃいけなかったんだよね。一人で保健室まで歩けるから大丈夫って言われたけど、先生に付き添ってあげるべきだったのに、そこまでは気が回らなくて」


 「ほんと、そういうとこなんだよな」


 「え?」

 
 「妃奈が学園の生徒に好かれる理由」



 俺からの真剣な褒め。

 どうやら妃奈は、恥ずかしさの限界に達したようだ。


 慌てたように俺から視線をそらし


 「そっそんなことないよ、人気者なのは東条君でしょ」


 と、両手と首をブンブン振って全力否定。