「まだ片付けしなくてもいいじゃん」

「さっさと終わらせたいの。やることあるし」

「梨花」

 食器を洗う私の後ろに、お兄ちゃんがやってきた。
 私より、背がずっと高くて、茶色に染めててもサラサラでつやつやな髪。

 切れ長の二重は睫毛も濃くって、鼻筋の通ったかっこいい顔。
 綺麗な唇から聞こえる声は、いつも耳をくすぐって……。

「なに、不貞腐れてんの」

 長い腕で、私は後ろから抱きしめられる。

「別に」

「そうなの?」

 耳元で囁くのずるい!
 息が……かかる。