美結「(そう言えば...)」

美結「(葵と出逢った頃は不仲だったよな)」





───10年前───



2014年7月

夏休み、登校日の帰り道...

公園に来たのは体操服の美結。

自転車を止めてカゴに

ピンク色のヘルメットを入れる。

そこに他校の女子友達と

ランドセルを背負った男子と女子友達も来る。

美結「よし、みんなそろったな!」

女子➀「今日は何して遊ぶ?」

女子②「ドッジしよー」

男子「さんせーい」

美結「えー...ドッジ苦手なんだよなー」

女子②「みゆはスポーツが苦手なんでしょw」

女子③「たまにはいいじゃん」

美結「...まぁいいよ」



3:3に分かれてドッジボール対決をする美結達。

美結「いっくぞー!」

美結はボールを勢いよく投げるが

思いきり外れて公園の外へ転がっていった。

女子③「もー、どこに投げてんのw」

女子②「みゆ取ってきてよー」

美結「えー」



美結は公園を出てボールを探す。

美結「...あった!」

ボールを拾った時...

介護施設の外にいる短髪の少女が目に入る。

美結「...」

町では見かけないオシャレな制服で

美人で子供ながらどこか気品を感じる。

男性「暑いのにえらいねˆ ˆ」

葵「いえいえ...ˆ ˆ」

その微笑む少女は、美結と結ばれる"葵"だった。

美結「(子どもがボランティア...)」

気になる美結は声を掛けようとするが

人見知りで勇気が出ず...

女子②「みゆー」

美結「待って」

美結「......」

女子➀「何してんのー?」

女子②「まだ?」

美結「...あぁもう!」

イライラする美結は近付いて声を掛ける。

美結「おい!」

葵「?...」

美結「どこの小学校?私は〇〇中学校2年生」

葵「...」

美結「え、シカト?マジありえないんですけど」

葵「...中学生です」

素っ気ない態度にイラッとくる美結。

美結「っ...」

美結「ウソつけ!小学生だろ!」

葵「...」

美結「何も言わないってことはやっぱそうかw」

美結「子供でちゅね☆」

葵「お引き取りください」

美結「何を引き取るわけ?」

葵「...帰ってくださいという意味です」

美結「は?意味不」

美結「なんで帰らなきゃいけねぇの?」

葵「...お引き取りください」

美結「いやだ」

葵「...」

美結「おい、逃げんなよ」

(グイッ!)

少女の腕を掴む美結。

美結「逃げんな!チビ」

葵「...やめていただけます?」

美結「だってチビじゃん」

美結「お子様♪」

葵「...」

美結「...んだよその目、やんのか?」

美結「おい」(ボンッ!)

葵を押す美結。

葵「っ...」

葵「帰れよ」

美結「は?なんだお前その言い方」

葵「帰れっつってんだよ」

美結「ッチ...テメえ...」(ボカッ!)

美結は葵の腹を強く殴る。

葵「っ...」(ボンッ!)

葵も美結の足を蹴る。

美結「うぐっ!己...やりやがったな!」

葵のブラウスの襟を引っ張る美結。

女子②「みゆがケンカしてる!」

女子➀「え」

女子②「やめて!」

美結を止めようと走ってくる友達。

そこへ介護施設からも従業員が出てくる。

葵は何もなかったように

美結から離れると中へ入った。

美結「ッチ...アイツ覚えとけよ...」

美結は走り去る。

従業員「っ...?」

従業員はびっくりして見ていた。



翌日...

美結は学校が終わると、

速攻で友達を連れて昨日の場所へ向かう。

女子②「また行くの?」

美結「おう、アイツぶんなぐる」

女子②「やめときなよ」

介護施設に来た美結は外を見回すが

葵の姿はない。

美結「ッチ...逃げやがったな...」

美結「出てくるまで待ってやる」

女子②「もういいじゃん」

美結「...」

すると、介護施設から葵が出てくる。

美結「っ...来たぞ」

葵「...」

美結「今日もママとパパいないのかな?」

美結「一人で大丈夫でちゅかぁ?w」

葵「...」

美結に視線を向けず冷めた目で過ぎ去る少女。

その態度に余計気に入らず...

美結「おい、お前昨日のこと分かってるよな?」

葵「...」

美結「なんか言えよ」

相手にしない葵は介護施設へ戻る。

美結「裏表ありすぎて怖www」

女子②「...ねぇ、みゆ」

美結「んー?」

女子②「なんでそんなにあの子を嫌ってるの?」

美結「アイツ昨日"帰れ"って言ってきたり」

美結「けってきたんだぞ」

女子②「それはみゆが悪口言ったからでしょ」

美結「...まぁそうだけど」

女子②「ってか、なんで悪口言ったの?」

美結「...ウザったいから」

女子②「本当に?」

女子②「ウザいのにまた会いに行くの?」

美結「...」

女子②「本当は仲良くなりたいんじゃないの?」

美結「んなわけw」

美結「あんなヤツなんか大っ嫌いだよ」



『今日一番運勢が悪いのは...ごめんなさい』

『おひつじ座のあなた...』

美結「うわー...」

テレビの占いの予感はよく的中していた。



学校の身体測定...

一人ずつ保健室を出て教室に帰っていく中

美結「...」

美結は他のクラスの行列の横を通る時

目の前に片足を出してくる不良女子。

美結「っ...」

運がいいことに俯いて歩いてた美結は避けた。



休憩時間...

美結「...」

女子生徒➀「...」

女子生徒②「...」

女子生徒2人とすれ違った時...

(バチッ!)

美結「っ!...」

突然、頬を叩かれる。

女子生徒達「ハハハwww」

美結「...」



授業開始前...

美結「保健室に行ってもいいですか」

英語の先生「はい、どうぞ」

男子生徒「うわっ!アイツまた保健室かよ」

男子生徒「サボり〜w」

美結「...」



ある日の放課後...

ストレスが爆発して癇癪を起こした美結は、

廊下から数十人の生徒達にバカにされ...

美結「ああああああああ!!」

女子生徒➀「〇〇ちゃん気を付けて!」

女子生徒②「逃げて!危ないよコイツw」

椅子を持ち上げた美結は女子生徒を追いかける。

女子生徒「キャー!w」

美結「お前ら全員死んじまえ!!」

女子生徒➀「は?お前調子のんなよ」

女子生徒②「テメーが死ねや」

(バシッ!バシッ!)

美結「っ...」

不良女子に暴力を振られ、嗤い声が響き渡る。

唯一小学校から同じ不良女子は

美結を利用して友達の振りをしていた。



美結「......」

一人になった美結は薄暗い教室で号泣していると

廊下を通る男子生徒達に笑われ、

一人に唾を吐かれる。

その後、後で来た女子生徒達に慰めてもらったが

美結の気持ちは変わらず

黒板に自殺宣言と恨みの遺言を貼り付け

教室を去った。

恨みの遺言を見た不良女子は

腹を立て美結を探す。

廊下で保健室の先生に

助けを求めて座り込む美結を

見つけた不良女子は問い詰める。

危険だと避難させられた。

その後、先生の判断によって

美結は"加害者"扱いになった。



帰り道、一人で介護施設の前を通りがかると

少女の姿はなく入口で話す従業員達。

従業員➀「さっき、倒れちゃって...」

従業員②「救急車で運ばれたところです」

従業員➀「体に来ちゃったんかな...」

従業員②「やっぱりまだ中学生なのでね...」

美結「っ...」

その言葉に立ち止まる美結は従業員達に近付く。

美結「...あの」

従業員達「?...」

美結「その子って...髪が短い女の子ですか?」

従業員➀「...えっと...あなたは?」

従業員②「お友達?」

美結「はい...友達です」

美結「どこの病院に運ばれたんですか?」

従業員➀「えっと...〇〇病院って分かるかな?」

美結「...」

それは聞いたことない病院の名前だった。

美結「どこにありますか...」

従業員➀「えっとね...」

美結は経路を教えてもらったが覚えられず

思いきって通行人に聞きながら

葵の病院へ向かう。



日は暮れだして...

突然、大雨が降り出す。

(ザー...)

傘を持ってない美結。

美結「(どうしよう...)」

見知らぬ景色にどうしようもなく不安が強まる。

(ピカッ!)

薄暗い空に稲妻が光る。

美結「ひっ!...」

(ゴロゴロバリバリッ!)

落雷の音に耳を押さえる美結。

美結「うぅっ...!」

怖くて泣き出した時...

「美結〜!」

美結「っ...」

声に振り向くと、端に止まった車の窓から

覗いてる塾の先生。

美結「先生...助けて...」

塾の先生「傘は?!」

美結「持ってない...」

塾の先生「早く乗って!家まで送るから」

助手席に乗る美結にハンカチを渡す美結。

塾の先生「風邪引いちゃうよ!」

美結「...今、病院に向かってる」

塾の先生「病院?」

美結「友達が倒れたって」

塾の先生「ありゃっ...」

美結「だから〇〇病院に行きたい...」

塾の先生「いいけど...お母さんは知ってるの?」

美結「ううん」

塾の先生「お母さんも美結のこと心配するから」

塾の先生「電話して事情伝えとくよ?」

美結「うん」



美結は塾の先生の車で病院へ送ってもらい...

塾の先生「じゃあ、行っておいで」

美結「...」

美結「先生もついてきて」

塾の先生「うーん...今から行くところあるんよ」

美結「...」

塾の先生「美結のお母さんも行くって」

塾の先生「だからもうそろそろ来ると思うよ」

美結「うん」

塾の先生「大丈夫!行っておいで」

美結は塾の先生に手を振った後

中へ入っていった。



(ポタポタ...)

ずぶ濡れの制服から床に滴る雨水。

美結「...」

一人じゃ何も分からない美結は、

不安な気持ちで辺りを見回す。

美結「(急がなきゃ...)」

通りがかる看護師に聞く。

美結「すみません...」

看護師「はい?」

美結「えっと...」

美結「(あの人達に名前聞けばよかった...)」

美結「さっき...〇〇で中学生の女の子が」

美結「倒れて病院に運ばれたって聞いたので...」

美結「その子の友達です」

看護師「一人ですか?」

美結「えっと...」

そこへ美結の母が来る。

美結の母「びしょ濡れじゃん」

美結にハンカチを渡す母。

美結の母「塾の先生から電話があったけ」

美結は知ってる情報を看護師に伝えて

面会の手続きをする。



美結「...」

恐る恐る教えてもらった病室に入る美結達。

そこにはベッドに横たわっている葵。

葵「...っ」

葵は美結に視線を向けて息が止まる。

美結の母「こんにちは、大丈夫...?」

葵「こんにちは...」

美結の母に会釈する葵。

美結の母「良かった」

美結の母「...あれ?お母さんは?」

葵「まだ来られてないです」

葵に視線を向けず俯く美結。

美結の母「こんな可愛い子いたっけ?」

美結「っ...うん...」

友達だと嘘をついてる美結。

すると、そこへ...

病室に女性と幼女が入ってくる。

その華やかな雰囲気から違いを感じた。

女性「...?」

美結達を見て立ち止まる女性。

美結の母「あっ...こんにちは」

女性「...どちら様ですか?」

その女性と幼女は葵の母と妹だと分かる。

美結の母は関係性を説明するが

葵の母はしっくり来ない様子だった。

葵の母「...何方で知り合われたのです?」

美結の母「学校でしょ?」

美結に聞く母。

美結「っ...」

葵の母は再び美結の制服を見て言う。

葵の母「娘と同じ学校では御座いませんが...」

美結「...」

美結の母「え...?」

美結の母は少女の制服を見て初めて分かる。

美結の母「どこで知り合ったん...?」

美結は何も言えず俯く。

葵の母「関係者以外の方はお引き取り願います」

美結「っ...」



病院を出る美結達。

美結の母「なんで何も言わんかったん?」

美結「...本当は友達じゃない」

美結の母「え?」

美結「知らない子」

美結の母「...どういうこと?」

美結「この前あの子に悪口吐いて...なぐって...」

美結「ケンカになった」

美結の母「は?!なんで...?」

美結の母「知らない子にそんなことしたん?」

美結「...仲良くなりたかった」

美結の母「普通に話しかけりゃ良かったのに」

美結の母「もう仲良くなれんわ」

美結の母「あの子の親もあんたの話を聞いて」

美結の母「関わるなって言うよ」

美結「...っ」

後悔する美結の頬に涙が伝う。



葵の妹「みて〜」

テディベアを見せる妹に微笑む葵。

葵の母「...何処の子か知りませんけど」

葵の母「この事はお父様に報告するわ」

「...」



そして美結が起こした学校の騒動も母は知り

翌日から相談室登校になった。



ある日...

ボロボロな美結に近付いてきたのは

ショートカットで赤紫の眼鏡の

体操服の女子生徒。

女子生徒「何しとん?」

美結「...っ」

その女子生徒は、

数ヶ月前の全学年体力テストの日

タイプで気になっていた後輩だった。

美結「っ...先生を待ってます...」

女子生徒「敬語使わんでええよ、先輩なんだし」

美結「あっ...」

女子生徒「友達になろ!」

美結「っ...うん!」

女子生徒「うちはトマト、よろしく」

トマト「友達のしるしに文房具交換しよ!」

美結「いいよ!」

後輩の鉛筆と美結のシャーペンを交換する。

夢のようだった。



その後、トマトが住む古びたアパートに

連れられた美結。

しかし、中から響き渡るトマトの

父の罵声に怯える美結は怯えて去った。

そこへ美結の名前を大声で叫んで

自転車で追いかけて来るトマト。

トマト「みゆー!!」

美結「っ...」

トマト「はぁ...はぁ...本当ごめん...」

トマト「空手の習い事忘れとったんよ」

美結「そうだったんだ...」

トマト「でも大丈夫!公園行こ!」



中学校の近くの公園に遊びに来て...

トマト「何する?」

美結「ようかい体操第一踊ろ!」

トマト「なにそれ」

美結「えっ、知らないの?今流行ってるよ」

美結「マネして!」

トマト「...こう?」

美結「www」

トマト「www」



それから美結とトマトは、

毎日学校でも遊ぶようになり...

トマト「あれ?保健室の先生いない」

トマト「一緒にベッド隠れよ!

トマト「シーッ...」

美結「っ...///」

保健室の先生「あっ!いけません!」

保健室の先生「ベッドに隠れちゃ!」

トマト「へへっw見つかったw」

美結「(みゆまで...)」

美結「(でも...いいや)」

美結にとってトマトは一人の友達だった。



トマト「修学旅行か、いいなー」

美結「トマトも来年行けるじゃん」

美結「...みゆがいないのさびしい?w」

トマト「うん」



担任の説得で勇気を出した修学旅行では

終始、保健室の先生と行動する美結。

自由行動では...

男子生徒➀「なんでお前一人なん?」

男子生徒②「友達いないからだろ」

美結「...」

駅に帰ってバスから下りた時は...

担任「1人1つバッグを持って〜」

担任「持ち主に返してあげてね〜」

美結「(はぁ...持ちたくないな...)」

美結「(いやがられるの分かってるし)」

美結「(でも先生に怒られる)」

美結は仕方なくバッグを持つと...

女子生徒➀「うわー...最悪...」

女子生徒②「ドンマイw」

振り向くと、背後から美結を睨む女子生徒3人。

美結「っ...」

女子生徒➀「返して、それうちのなんだけど」

そう言ってきたのは、あの日の放課後

美結を慰めてくれた女子生徒だった。

美結「...」

恐る恐るバッグを渡すと、奪い取る女子生徒。



数日後...

トマト「おかえり!みゆ」

美結「ただいま」

トマト「遊ぼー」

美結「うん!」

昼休憩、学校を探検する美結とトマト。

トマト「先生!手伝うよ」

美結「いいの?」

トマト「みゆ!一緒に手伝うよ!」

いつも一緒にいる二人を見て感心する先生達。

保健室の先生「ふふっ、仲良しだねˆ ˆ」

美結「...」

美結はトマトの横顔を眺めていた。



ある日の午後学活のことだった。

保健室で突然、美結の膝に座って

自分の胸を触らせるトマト。

美結「っ...」

トマト「やろ?」

美結「え?」

トマト「来て」

美結の手を引くトマトに振り向く保健室の先生。

保健室の先生「ちょっと、二人でどこ行くの?」

トマト「トイレ」



職員室前のトイレに連れられた美結。

美結「...何するの?」

トマト「分かってるでしょ」

トマト「女と女のアレ」

誘いの予感は的中して

ここではマズいと個室に入らせる。

トマト「やろ」

美結「待って、その前に...」

美結「私のこと好きなの?」

トマト「...うん」

美結「じゃあ、ちゃんと言って」

美結「好きって」

トマト「...」

トマト「先輩、好きです///」(顔を隠す)

美結「っ...」

美結「私も...体力テストの日から気になって...」

美結「ずっと好きだった」

トマト「え、マジ?w」

美結「うん」

トマト「二人だけのヒミツね」

美結「うん...ヒミツね」

美結「キスしていい?」

トマト「うん」

美結「...舌入れていい?」

トマト「いいよ」

目を閉じて恥ずかしげにつむるトマトの唇に

ぎこちなくキスをするが

歯が当たり勇気がなくて舌を入れられず。

トマト「...」

その後、二人は激しく抱き締め合い

トマトに胸を撫でられる美結。

トマト「あっあぁん...」

美結「っ...」

トマト「ほら...声出して...あっあぁん...」

美結「あぁ...んっ...」



それから毎日放課後になると...

トマト「シーッ...だよ?」

美結「うん...」

(ドンッ!)

トマト「何やってんだよ!www」

美結「ごめんwww」

人影ない場所の床に横たわるトマトに乗って

首筋にキスをする。

トマト「はっ...あぁん...」



ノートの紙切れで

ラブレターを交換した日もあった。

美結「("先パイ好き♡"って書いてる...///)」



男子生徒➀「うわっ!〇〇(美結の名字)だ」

男子生徒②「きめぇんだよ、シッシッ」

男子生徒達「www」

美結「...」

同じクラスの男子生徒達と久々にすれ違って

心が傷んでいると...

トマト「よ」

美結「っ...トマト...」

トマトの顔を見て安心する美結は抱きつく。

トマト「な...何だよ?!気持ち悪いな...!?」

壁際に後退りするトマト。

美結「男子達に悪口言われた...」

トマト「気にすんなよ」

美結「トマト...」

美結「...トマトは私の宝だよ」

トマト「うちは宝じゃないわ!人だわ」



ある日の放課後、階段を下りている時

美結は調子に乗った勢いで

運動シューズ袋をトマトにぶつけてしまう。

トマト「痛っ...」

美結「あ...ごめん...大丈夫?」

トマト「...ッチ」

(ボンッ!)

腹が立ったトマトはスリッパを脱ぎ投げると

階段を下りて去っていった。

美結「っ...」

美結は泣きそうになっていると

同じクラスの女子生徒達とすれ違う。

女子生徒➀「あっ、〇〇さん」

美結「どうしよ...」

女子生徒②「なんかあった?」

美結「さっき、後輩にシューズ袋ぶつけて...」

美結「怒らせちゃった...」

女子生徒➀「はぁ...?何しとん...?」

女子生徒②「早く謝りに行きな」

美結「でも...どこか行っちゃった...」

女子生徒➀「探しなよ」



美結「トマト...さっきはごめん...」

トマト「...」

トマト「だからお前はいじめられるんだろが」

美結「っ...」

初めてトマトに不信を抱いた時だった。



翌日から美結はトマトに態度が冷たくなる。

トマト「みゆー、見て!」

美結「...」

トマト「みゆー」

美結「...何?」



数日後...

トマト「遊ぼ」

弁当を食べてるところに来たトマト。

美結は人影ない階段に呼び出されると...

トマト「お前最低だな」

美結「え、何が...?」

トマト「付き合ってることチクったろ」

美結「言ってないよ?」

トマト「ウソつけ」

美結「本当に言ってない」

トマト「お前と絶交するわ」

美結「信じて」

トマト「...ってか」

トマト「顔的に無理」

トマトはそう言い去った。

美結「......」

美結は掃除時間が始まっても

相談室の先生に声を掛けられるまで

その場で立ち尽くしていた。



翌日、美結は年下の女子友達と同じ

フリースクール登校することになった。

女子生徒「みゆちゃん、一緒にゲームしよう」

美結「いや、いいです」

女子生徒達「...」

人間不信の美結は心を開くまで時間が掛かり

小学生の頃以来に再会した女子友達も

ひねくれた美結を見て態度が冷たくなる。

ある日、女子友達と些細なトラブルになり

贔屓が著しい塾長から差別されていた美結は

理不尽に加害者扱いを受けたり

先生にも冷たくされたり

情緒不安定なところも

生徒達から避けられるようになった。



美結「......」

ノートにシャーペンで恋愛小説を書くことで

棘のような毎日を忘れさせるのだった。



三学期の終業式の日...

美結は、通知表と春休みの宿題を受け取りに

久々に放課後の学校へ行った。

保健室の先生「美結ちゃん久し振りˆ ˆ」

トマト「みゆ!お前どこ行ってたんだよー!」

美結「っ...」

強く肩をゆすぶってきたのはトマトだった。

別人のように変わる人格に心底は分からず。

保健室の先生「こら!謝りなさい!」

トマト「ごめんなさい」

保健室の先生「先生じゃなくて美結ちゃんに!」

トマト「...ごめんなさい」

美結「大丈夫だよˆ ˆ」



帰り道...

美結は久々に介護施設の前を通る。

美結「......」

あの日を思い出して締め付けられる胸。

(ガチャッ...)

ドアが開いて外に出てきたのは葵だった。

美結「っ...」

美結は急いで去ろうとすると...

葵「ご無沙汰しています」

美結「っ...」

背後からの声に立ち止まる。

葵「...あの日は有難うございました」

美結「...」

美結は恐る恐る振り向く。

美結「...はい」

葵「...」

美結「あ、あの...」

葵「...?」

美結「この前は悪いことしてごめんなさい」

葵「いえ...お気になさらず」

葵「こちらこそ、軽率な言動をしてしまって」

葵「申し訳ありませんでした」

美結「...けいさつ?」

葵「...けいそつ、です」

美結「あっあぁ...けいそつ...?ってなんだ...」

美結「ごめん、バカだからw」

葵「いえ...」

美結「...本当は、悪いことしたのは」

美結「仲良くなりたかったから...なんだ」

葵「...」

美結「...そういえば、何才?」

葵「中学2年生です」

美結「えっ!同い年?!」

美結「ごめん、年下だと思ってた」

葵「...よく小学生に間違えられるので」

美結「どこの学校?」

葵「華園学院です」

美結「が...学院?!」

美結「そんなアニメみたいな学校あるの?」

葵「...」

美結「名前は?」

葵「宮林と申します」

美結「下の名前は?」

葵「葵です」

美結「あおいちゃんか、いい名前だねˆ ˆ」

葵「...有難うございます」

美結「私は、みゆ!」

葵「宜しくお願い致します」

美結「あのさ、敬語使わなくていいよ」

美結「友達だから!」

葵「...」

葵「ありがとう」

美結「ヘヘっˆ ˆ」

美結「...あ、でも」

美結「あおいちゃんの家族って」

美結「私のこと嫌ってるよね...」

葵「...それは心配しなくてもいいよ」

美結「本当?」

葵「あの日、家族に話したので」

葵「知り合って親しくなったと伝えました」

美結「また敬語になってるw」

葵「あっ...ごめんね...」

美結「でもよかった、これで仲良くできる」

美結「よろしくね!あおいちゃん!」

葵「うん...宜しく」

美結「じゃ、あの公園まで競争!」

美結「よーいドン!」

ダッシュで公園へ向かう美結。

葵「えっ...?」

葵も美結について走る。








───現在───

美結「(...葵と出逢ってなかったら)」
美結「(俺は愛を知れなかったな)」