美結は外出の寄り道で親戚の家に遊びに来た。

従姪「きゃあああ!」(ドアを閉める)

美結「...」(硝子から覗く)

従姪「こわい...」

おもちゃの包丁を向けて

逃げ回る従姪の胸を刺したり首を切る仕草をする

美結の遊び方は変わっていた。

従姪「うぎゃあ!」(おもちゃの包丁を奪う)

美結「はははww」

美結「...喉カラッカラ」

美結「何か飲んでいい?」

親戚の男性「おう」

美結は冷蔵庫からアクエリアスを取り出す。

従姪「りおものむ」

先に子供用のコップにアクエリアスをつぐと

従姪に渡す。

美結「おかわり言ってね」

美結「...」

美結は一気に3杯飲み干す。



数時間後、従姪と遊んで疲れた美結は

ソファーに座ってクーラーに涼む。

美結の母「莉央、明日からまた幼稚園か」

親戚「もうすぐ莉央を迎えに来る」

美結の母「うちらもそろそろ帰ろうかな」

美結「...」

美結はスマホでInstagramを開く。

葵は昨日の蘭の事を聞かされたのか

気になっていた。

美結「(両親は聞いてると思うけど... )」

一週間振りに葵とのチャットを開くと

あの日、美結への謝罪と着信履歴が数件あった。

既読をつけていなかった時も毎日欠かさず

"おはよう" "ただいま" "おやすみ"と

メッセージを送ってくれていたと分かる。

美結「...」

そのメッセージは昨朝で途絶えていた。

胸騒ぎがする美結は思いきって

"久し振り"とメッセージを入力するが

複雑な気持ちに手を止めていると...

(バッ!)

突然、美結の腹部に飛び乗る従姪。

美結「うっ!...」

その衝撃でスマホの画面に手が当たり

メッセージが送信される。

従姪「あははは!」

美結「っ...」

青ざめる美結に従姪の笑顔も消える。

従姪「...?」

美結は気にさせないように笑って誤魔化す。



その夜...

ベッドに横たわってスマホを触る美結。

美結「(まだ返信来ない...仕事休みだよな?)」

美結「(...やっぱり蘭のこと)」

美結は再びInstagramを開くと、

葵から返信が来ていた。

美結「っ...」

"久し振り。ごめん、ちょっと立て込んでた..."

そのメッセージに引っ掛かる。

美結「...立て込んでた?」

嫌な予感が強まる美結は

"何があったの?"と返信する。

美結「...」

1分後、葵から"妹が入院して..."と返信が来る。

美結「っ...」

顔色を変える美結は葵に電話を掛けた。



(電話)

美結[もしもし...?]

葵[美結...本当にごめん...]

美結[...]

葵[あの日、美結に深い傷をつけてしまった]

美結[葵は悪くない]

葵[こうなったのは僕の責任]

美結[違う...蘭が悪いんだよ]

美結[ホントにアイツいい度胸してるよね]

葵[...ごめんね、美結]

美結[いいよ...そんなのキスに入れないから]

美結「葵の唇は俺のもの...」

葵[うん、美結だけだよ]

美結「うん...」

美結[ってか...蘭ちゃんが入院ってどゆこと?]

葵[昨日、父から連絡があって]

葵[蘭が急遽精神科に入院したんだ]

葵[PTSDと診断されたみたいで...]

葵[危険な目に遭ったらしい]

美結[っ...]

美結[何があったの?]

葵[見ず知らずの女性に突然襲われて]

葵[命を奪われそうになったって]

美結[...]

予想通り、葵は昨日の話を耳にしていたが

詳細は聞かされていなかった。

美結[...そうなんだね]

葵[それで...蘭の傍につくことになったから]

葵[しばらく美結と会えそうにないかも...]

美結[えっ...どうして?親は来ないの?]

葵[両親は忙しいから...]

美結[その理由だけで葵に任せたの?]

葵[いや...]

葵[...]

葵は言葉が詰まる。

美結[どうしたの...?葵?]

葵[...蘭は、両親に内緒で帰国してたんだ]

葵[僕は許可を取ってると聞いてたから]

葵[安心していた]

葵[けど...両親は知らなかった]

美結[...]

葵[ちゃんと確かめなかった僕に責任がある]

葵[だから責任持って蘭を看病するよ]

美結[なんで...?葵は悪くないって...]

美結[蘭は病院だから一人でも大丈夫だよ]

葵[...父にも電話で言われたんだ]

美結[なんて?]

葵["こうなったのはお前のせい"]

葵["責任取れ"って]

美結[...責任取るのは蘭ちゃんでしょ]

葵[まだ幼いからね...]

美結[幼いって...マセガキじゃねえかよ]

葵[...]

美結[看病って何日するの?]

葵[退院まで]

美結[一日何分?]

葵[泊まりがけなんだ]

美結[は...?そんなことできんの?]

葵[事情によっては可能だよ]

美結[泊まりがけって...誰が決めたの?]

葵[父だよ]

美結[そこまで...なんで否定しなかったの?]

美結[親と縁切って家を出たんだよね?]

美結[なんでまた親の言うこと聞いてんの...]

美結[もう親じゃないのに]

葵[うん、両親とは縁を切った]

葵[けど...蘭は妹だから]

美結[蘭とも縁切ってよ]

葵[...]

美結[数ヶ月泊まりがけってことないよね]

葵[...分からない]

美結[...]

美結[ねぇ...俺の傍に居てよ]

葵[ずっと美結の傍に居るよ]

美結[居ないじゃん]

美結[そいつのところ行くんでしょ]

葵[ごめんね...美結...]

葵[心は繋がってる]

美結[...やめて、その言葉]

美結[中学の卒業式を思い出す]

美結[またあの時と同じ...離れるみたい]

葵[離れないよ]

葵[愛してる...]

美結[...]

美結[っ...]

葵[...]

葵[抱き締めたい...っ]

電話越しに聞こえる美結の泣く声に

葵は胸が締め付けられる。