美結は、葵からのメッセージを無視し続け

マッチングアプリで新たに出会った

好みの女性とやり取りをしていた。

しかし、美結の自己中心的な言動に

疲れた女性は離れていった。

改めて葵への恋しい気持ちが強まるが振り払う。



タクシーの窓から外を眺める。

美結「待ちに待ったBloody Day」

美結「...葵には申し訳ないけど」

美結「飛び回る虫を放っとくわけにはいかない」

美結「殺虫剤を使わず追い払う」

脳裏に焼き付いている蘭

考えてきた計画を実行する時が近付く。



来た場所は、葵の家。

美結は壁際に隠れて葵に会いに来る蘭を待つ。

美結「(今日じゃなくて明日ってこともあるな)」

美結「(...ってか、思ったんだが)」

美結「(両親が蘭と葵を会わせるか...?)」

美結「(...反対しないわけがない)」

美結「(ってことは、蘭は...)」

美結「(親に黙って一人で帰国してるのか...?)」

美結「(...クソガキが)」

美結「(あの頃から気に入らなかった)」



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9年前...

美結(当時14歳)「公園行こ!」

葵(当時15歳)「うん!」

蘭(当時5歳)「おねえちゃま〜!」

葵「蘭!」

葵の母「こんにちは」

美結「こんにちは...」

葵「お母様」

葵の母「用事で来たの」

蘭「おねえちゃまも!」(葵の手を引く)

美結「...」

葵の母「お姉様は今お友達といらしてるから」

蘭「いっしょにいけないの...?」

葵の母「お母様と一緒に行きましょうね」

蘭「...」

葵「ごめんね...蘭、お家で遊ぼうねˆ ˆ」

蘭「うん...」

葵の母「失礼いたしました」(蘭の手を引く)

美結「...」

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美結「(いつも"おねえちゃま"って甘えて)」

美結「(本当に恋愛感情を抱くなんて...)」

蘭が葵の口にキスをしたあの時の光景が過る。

美結「(...悪夢みたい)」

美結「(俺以外が葵の唇に触れたなんて...)」

生気が無い美結を遠くから見ている一人の影。

「...ハァ、ハァ///」

その影はゆっくりと背後へ近付いて行く。

美結「...」

美結「?...」(振り向く)

数秒後、青ざめる美結。

そこにいたのは、

4年前に付き合っていた女性

"日和"だった。

美結に別れを告げられてから

現在もストーカーを続けていた。

美結「...」

美結は速やかに去ろうとすると...

(グッ!)

強く美結の腕を掴む日和。

美結「...離せや」

日和「なぁ」

美結「あ?」

日和「戻ってきたら許してやるわ」

美結「誰が戻るかボケ」

美結「まだ俺のこと追ってたのかよ」

日和「お前のせいで精神疾患になったわ」

美結「俺は悪くないし」

日和「お前を忘れようとしとったけど」

日和「無理やったわ」

美結「...」

日和「ここ、新しい恋人の家やろ」

美結「昔から付き合ってる奴だわ」

日和「はぁ?ウチと付き合ってた時も?」

美結「あんたは浮気相手」

日和「...殺してやる」

日和「こいつもお前も」

美結「今そんなんに付き合ってる暇ないの」

美結「とっとと帰ってくんない」

日和「....」

日和はズボンのポケットから包丁を出す。

美結「...っ」

我に返って後退りをする美結に近付く日和。

日和「恋人に助けてって叫びな?」

美結「...助けてなんて言わねえよ」

日和「言えよ」

日和「お前らまとめて殺してやるわ」

美結「殺すなら俺を殺せ」

日和「へ〜...守ってるんだ?恋人を」

美結「...別に」

日和「え?別に?」

日和「じゃ、お構いなく殺すわ」

日和「こいつから」

日和は葵の家のインターホンを押す。

(♪〜)

美結「っ!!...」

美結はドアを背中で押さえて立つ。

日和「フッ(笑)守ってるやん」

美結「お前ざけんなよ...」

日和「あは」

美結「(葵...応答するな...)」

美結は必死に祈る。

美結「っ...」

日和「あれ?おらへんのかなぁ〜?」

葵の応答は無い。

日和「居留守かなぁ」

美結「...家にいねえんだよ」

日和「ふーん?じゃあ待っとくわ」

美結「警察呼ぶぞ」

日和「お前を先に殺すかぁ」

日和は美結に包丁を向ける。

美結「やめろよ...こんな時に」

美結「追い打ちかけんといて」

美結「恋人のことで色々あって苦しいんだよ」

日和「そんな奴別れろ」

美結「...事情知らねえのに言うなよ」

美結「恋人は悪くねえから」

美結「頼むから...今はほっといてくれ」

座り込む美結。

そこへ蘭が歩いて来る。

美結「っ...」

蘭「っ...」

日和「あいつか?」

美結「...おう」

美結は嘘を付く。

日和を使って蘭の命を奪おうと。

日和「...」

鵜呑みにする日和は蘭へ近付く。

蘭「...っ」(後退り)

怯える蘭を見下ろす日和。

日和「...本間にこいつ?」

日和「えらい子どもやなぁ」

美結「...」

蘭「...?」

日和「こんなチビのくせに」

日和「...メタメタに殺したるわ」

日和は包丁を蘭に向ける。

蘭「キャーー!」

走って逃げる蘭を日和は追い掛けて行く。

美結「...」

美結は速やかに去る。



蘭「いやーー!助けて!」

悲鳴に振り向く人達は驚いて立ち尽くす。

男性は日和を止めて包丁を奪い取る。

集う人達は日和を押さえつけて

警察に電話をする。

蘭「うぅ...うぅう!」

男性「大丈夫だよ」

女性「よしよし...ケガはない?」

恐怖で号泣する蘭を抱き締める女性。



美結「(...やっぱりマズい)」

美結「(蘭を殺された後の葵の精神が...)」

取り返しのつかないことになる前に

日和を止めようと探しに行く美結。

そこへ響き渡ってくるパトカーのサイレン。

美結「...」

走って後を追う。



人集りに足を止めると、

パトカーに乗せられる日和に警察と話す蘭。

美結「っ...」

美結は安堵する同時に考える。

蘭に自分のことを話されているのでは、

日和を利用して嘘をついたことが分かった時も

共犯になってしまうのではと。

美結「...そうなったらその時だ」