曇り空の人影無い花園公園で

花壇に座ってスマホを触る美結。

風に揺れる薔薇の香り。

美結「ちょっと待って...」

美結「恥ずかしいな昨日の...」

官能小説で思い通りに辱められる葵の姿が過る。

笑いしか出なかった。

美結「...」

葵を振り払っても、短冊を破っても、

何故、まだ辱めたいのか。

結局愛しているのかと熱くなる胸。

美結「...もう愛してなんかないよ」

美結「戻ったら...また傷つく」



再び抉られて棘が刺さる。

涙は枯れていた。

前日、美結は母と大喧嘩になり外で罵声を上げ

ファン達にも八つ当たりをしていた。

その夜は、感情が無になるという

恐ろしい事もあった。

惨劇な殺し方を繰り返し

脳に言い聞かせても

微塵も哀しいと思えなかった。

それは一瞬の憑依だったように我に返り

涙が溢れ出た。



(チュンチュンチュン...)

モスキート音のように聞こえる小鳥の囀る声に

消えていく心。

美結「......」

美結はスマホでブログを開くと、

ファンからのコメントが目に入る。

"美結、無理しないでね💦"

美結「...」

そのコメントに"黙れ"と返信した。

美結はピエロのように笑う。



葵「...」

一昨日からInstagramで

美結に送っているメッセージに既読がつかず

仕事中も考え込んでいる葵。

部下「宮林さん」

葵「...あっ、できた?ありがとう😊」



テスターのコロンを手首と首筋に付けて

夏限定のフルーツジュースを買って

飲んだ美結は、

ゆめタウンに着いてソファーに座る。

美結「...」

良からぬことを考える。

美結「(蘭を殺そう)」

美結「(...だったら刑務所に入らんといけん)」

美結「(自殺に追い込むか...)」

美結「(でも、葵まで後を追ったら...)」

美結「(蘭を消した意味が無い)」

美結「(...嘘をつけばいいのか)」

計画を立てる美結の瞳は死んでいた。