梅雨に入って一週間が経った頃...

美結「...」

扇風機で涼む美結は考える。

今朝から葵の写真に視線がいかず

目にしてもドキドキしない。

些細なフラッシュバックで

精神的に疲れているのかと思ったが

パソコンの待受に映るボーイッシュアイドルは

いつも通り四六時中眺めている。

美結「......」

目が覚めた同時に

葵への愛も冷めたのかもしれない。

そう思いたくない美結。

水風船のように急激に膨らんだ愛情が

破裂することはあるのだろうかと考える。



曇り空に蒸し暑い町を一人歩く美結は、

イラついてズボンのポケットに手を突っ込み

信号待ちで社会見学の小学生達が乗ってるバスを

10秒ぐらい睨みつける。

美結「はぁ...ッチ、ッチ、ッチ」

美結「クソ!」

暴言を吐く美結にびっくりして振り向く人達。



美結「(...最近また病みかけてるな)」

葵の写真を見ても気持ちは動かず。

美結「...」

刺激を求めてスマホでインストールしたのは、

マッチングアプリ。

罪悪感を振り払ってプロフィール登録をする。

美結「(軽く...)」

すると、早速タップで反応してきた女性。

プロフィール写真の後ろ姿からして

ボーイッシュの女性だとひと目で分かる。

美結「(この娘カッコいいな...)」

美結「(ピアスも刺青も入れてんのか...)」

美結「(顔もカッコいいだろうな)」

美結「(今年20歳ってことは俺より3つ年下か)」

美結「(恋人しか募集してないのか...)」

美結「(文章から本気が伝わってくるな...)」

気になる美結は反応を返してマッチングすると、

迷わず「初めまして」とメッセージを送る。

美結「...さぁて、ダンスしよ」



数十分後...

スマホのランプが点灯する。

美結「返信来た?」

ドキドキして画面をつけると

Instagramの通知で葵からの返信だと分かる。

美結「あぁ...葵か...」

昨夜美結が送った「お休み❤️」に対しての

「おはよう、仕事行って来るね😊」

というメッセージ。

美結「...」

返信する気になれない美結は通知をオフにすると

スマホを置いた。



その夜...

マッチングアプリの通知が届く。

美結「っ...今度こそ...」

メッセージを開くと、マッチした女性から

「よろしくお願いします!」と返信があった。

会話を続けること数分...

美結「(えっ!この娘もダナ思考?!)」

美結「(余計燃える...)」

更に気になる美結。



そうなっているとは夢にも思ってない葵は、

Instagramで既読がついてる

美結のチャットを見に行く。

葵「...」

いつもマメな返信で

無視をしたことはない美結だが

珍しいとも怪しいとも思わない葵。



美結「(距離は遠いけど...)」

美結「(会いに来てくれたらいいなぁ///)」

葵のことは全く見えていなかった。

しかし、その後...

美結はその女性と合わないと感じて

自らマッチを解除したのだった。


翌日...

美結は新たにマッチした女性と話していると

早速"予定合わすんで会いましょ!"

とメッセージが送られる。

美結「(えっ!マジ?)」

美結「(ちょうど明日土曜だわ)」

気が早い美結は、

"明日福山駅来れますか?"と返信した。

美結「...あっ、やべ」

美結「葵に返信してねえ...怪しまれるわ」

Instagramを開くと、今朝も葵から

"おはよう、仕事行って来ます😌"

と送られていた。

美結は"おはよ❤️行ってらっしゃい!"

と表だけの微笑で返信した。



女性からの返信を待つ美結。

美結「(まだかなー)」

美結「(...そろそろ葵に返信しとくか)」

葵から"ただいま😊"と返信が送られていた。

"お帰り❤️"と返す美結の表情は冷めていた。

毎晩葵が仕事から帰ったら電話を掛けて

寝るまで話していた美結。

しかし、美結はその一言で会話を終わらせ

スマホゲームで遊んで眠りについた。



翌朝...

二度寝して8時過ぎに目が覚めた美結は、

マッチングアプリのチャットを見に行くが

女性からの返信は来ていなかった。

美結「え...嘘だろ」

既読がつかない仕様だが

オンライン履歴は数分前だった。

美結「は...?」

美結「...此奴、俺と会う気ねえだろ」

美結は腹が立ってマッチ解除をした。

美結「来てって言ったから非常識って?」

美結「そっちから会おうって言ってきたんだろ」

美結「はぁ...独逸も此奴も」

ムシャクシャする美結は家を出る。



歩いてゆめタウンに来た美結は、

フードコートの人がいない場所に座る。

美結「...」

スマホで小説を書いていると...

画面に着信が表示される。

その相手は葵だった。

美結「...」

美結は応答せず小説を書き続ける。

数秒後、着信が切れて考える。

美結「(葵から電話って...珍しいな)」

毎週土日は仕事が休みの葵に

会いに来てもらっていた美結。

美結「(何も言わないから怪しまれてるかな...)」

美結は葵に電話をかけ直す。

(プルル...)



【電話】

美結[...あ、もしもし]

葵[もしもし、ごめんね...忙しかった?]

美結[いや!大丈夫よ]

葵[ちょっと美結の声聞きたくなって...😌]

美結[あ...そうなんだ!(笑)]

葵[...今日何か予定ある?]

美結[いや...ないけど...]

葵[これから逢いに行ってもいいかなぁ(*´꒳`*)]

美結[あー...]

葵[美結の声聞いて逢いたくなっちゃった(笑)]

美結[んー...今、熱があってさ...😅]

葵[えっ...!大丈夫...?]

美結[うん...だから昨日から寝たきりで...]

葵[何か食べたいものある?]

美結[いや...何も!]

葵[好きなもの買って行くよ!]

美結[いや、いい!風邪うつるから💦]

葵[構わないよˆ ˆ]

美結[お...親がいるんだよ!来ちゃ駄目!]

葵[渡すだけでも駄目かな...?]

美結[駄目!親は葵を嫌ってるんだよ?]

葵[そうだよね...]

葵[でも...何かあったらいつでも言って?]

葵[逢いに行くから]

美結[ありがとうˆ ˆ]



電話を切った美結はInstagramを開くと、

葵から"今日は何してた?😊"

と昨夜に返信が送られていた。

美結「...」

一方的な美結が突然極端に引いたことで

近付いて来る葵に気持ち悪く感じる。

美結「(今後も言い訳で誤魔化そう)」

美結「(...家に来たら来たらで上手くかわそう)」

美結「(誰とも会いたくない...って)」

美結は小説の続きを書く。



1時間後...

美結の母「...」(洗い物をする)

(♪〜)

家のインターホンが鳴る。

美結の母「...」(応答ボタンを押す)

美結の母「は〜い」

葵[ご無沙汰してます、宮林です]

美結の母「はい...?どちらさんですか?」

葵[以前、美結さんと付き合いをしてた者です]

美結の母「中学校の時の?」

葵[はい、突然の訪問すみません]

美結の母「...どしたん?」

葵[美結さんのお身体が良くないと聞いて]

葵[気持ですが差し入れを持って参りました]

美結の母「え?美結は元気よ?」

葵[あっ...良くなられて?]

美結の母「美結がそんなこと言っとったん?」

葵[御熱があると仰っていました]

美結の母「え?朝から遊びに行っとるよ?」

美結の母「ゆめタウンに行って来るって」

葵[...そうだったのですね💦」

葵「此方の勘違いですみません...]

美結の母「いやいや、わざわざごめんな」

葵[いえいえ...こちらこそ失礼いたしました]

ロビーの通話が切れて葵は考える。

葵「...」


翌日...

美容院の店員「ありがとうございました😄」

美結「ˆ ˆ」

行きつけの美容院を出て車に乗った美結は

窓を眺めて考え込む。

美結の母「良いじゃん!可愛い」

美結の母「ボーイッシュに見える」

美結「...」

美結の母「どしたん?」

美結の母「やっと髪切れたんに嬉しくないん?」

美結「嬉しいよ」

美結の母「元気ないけ」

美結「そう?」

美結は昨日から憂鬱になっていた。

葵を甘く見ていたと。

美結「...」

嘘をついたことがバレてしまった以上、

誤魔化しようがなかった。

美結「(...いや、誤魔化す以外ない)」



家に帰って、避けていたInstagramを開くと

今朝に葵から"おはよう!"

とメッセージが送られていた。

美結「(返さないと嘘を認めたことになる...)」

言い訳を考えた末、"昨日の記憶がない"

"最近、精神状態が良くない"と送った。

数分後...

美結「(っ...もう返信来た)」

"美結...苦しかったね..."

"傍に居られてなかったね...ごめんね..."

"今すぐ抱き締めてあげたいよ..."

葵の返信に息苦しくなる美結。

美結「(そうじゃない...)」

"今は誰とも会いたくない...ごめん..."

と思ってもない返信をしてアプリを閉じた。

余計に葵のことが嫌になった美結は、

マッチングアプリに出逢いをより求める。



昼を過ぎた頃...

美結は母と買い物に出掛けようと家を出る。

美結「楽しみだなぁ♪」

美結の母「何が?」

美結「仙酔島と〜...カラオケ!」

美結の母「今月行かんとな」

美結「うん!あっ、あとココスも!」

美結の母「よー覚えとるな(笑)」

美結「包み焼きハンバーグ食べれなかったから」

美結「今度こそ、持ち帰って食べる!」

美結の母「分かっとるよ」

美結「島が1番楽しみ!」

美結「早く海に足浸かりたいな!」

笑顔でスキップして駐車場へ向かう美結。

その姿を葵に見られているとは

夢にも思っていなかった。



買い物後、家に着いて...

美結「ちょっと運動してくる」

美結の母「いつ帰って来るん?」

美結「適当に」

美結の母「5時には帰って来てよ」

美結「はーい、バイバイ」



スマホを触って公園へ向かう美結は

マッチングアプリを開く。

美結「...はぁ、誰からも反応ねえ」

美結「俺様の魅力が解んねえのか」

美結「フッ、可哀想な奴らめ(笑)」

その背後から近付く影。

美結「...」

気配を感じて振り向くと...

美結「...っ」

そこには葵がいた。

美結は青ざめて急いでスマホ画面を消す。

葵「身体良くなったんだねˆ ˆ」

美結「う、うん!良くなった!」

葵「それは良かったˆ ˆ」

美結「...こんなところで会うなんて!」

美結「び...嬉しいよ!」

葵「...僕も美結に逢えて嬉しい」

美結「ˆ ˆ...」

葵「ˆ ˆ」

美結「今...帰り道なんだよね!」

美結「親に早く帰って来いって言われてさ💦」

戸惑ってる美結は上手く嘘がつけなかった。

葵「美結の家は反対方向だね」

美結「っ...あ...あれ、本当だ!」

美結「なんで間違えたんだろ!ドジだね(笑)」

美結「じゃあ...またね!」

葵「もう大丈夫だよˆ ˆ」

微笑む葵は美結の手を取る。

美結「っ...」

葵「僕の家で愛し合おうね」

美結「いや...だから家に帰らなきゃ」

葵は美結の手を引く。

美結「ねぇ葵...?」

葵「...」

美結「葵!」

葵「愛し合おうねˆ ˆ」

離れようとする手を強く握る葵に美結は察する。

嘘が終わった時だと。

美結「...」(バッ!)

美結は手を振りほどくと走って逃げる。

しかし、葵は美結を一瞬で捕まえる。

美結「離して!」

葵「美結...どうして逃げるの...?」

美結「殺す気でしょ...」

葵「...そんなことしないよ、愛しい美結を」

美結「だって恐いよ...」

葵「大丈夫だよ...何もしないよˆ ˆ」

葵「美結も僕と愛し合いたいよねˆ ˆ」

美結「...」

葵「ね?」

美結「っ...うん...」

葵「ˆ ˆ」

美結「ˆ ˆ...」

嘘をついたことは正直に謝り

また新たな言い訳で相手を信じさせなければ

生きて帰れる手段は無い

と思った美結は葵の高級車に乗った。



車を黙々と走らせる葵。

葵「...」

美結「...」

家から遠ざかるにつれて恐怖が大きくなる美結。

景色は見知らぬ街へと変わる。

美結「(やっぱりやめよう...)」

美結「(葵は平常心じゃない...)」

美結「(家に行ったら殺される...)」

美結は逃げ出そうと考える。

美結「...ねえ、葵?」

葵「うん?」

美結「あの...コンビニ寄ってほしい...」

美結「お腹痛くなって...」

葵「ここでしていいよ」

美結「え...っ」

美結「いや...汚したくないし」

葵「大丈夫だよˆ ˆ」

美結「俺の下着とかズボンも汚れるから...」

葵「脱いでしていいよ」

美結「...」

予想外の発言に言葉が出ない美結。

葵「我慢しなくていいよˆ ˆ」

美結「...もうおさまった」



葵の一軒家に着いて...

美結「...お邪魔します」

葵「いらっしゃい」

ホコリ1つもないフローリングに白色の壁、

薔薇の香りに息を呑む。

葵「座ってˆ ˆ」

美結「はい...」

恐る恐るソファーに座る美結。

葵「緊張しなくても大丈夫だよˆ ˆ」

美結「...」

美結「葵...嘘ついてごめん...」

葵「いいよ、そんなことˆ ˆ」

葵はティーカップにローズティーをそそぐと

美結の前に置く。

美結「...ありがとう」

葵「ローズティー飲める...?」

美結「うん」

葵「良かったˆ ˆ」

葵は美結の横に座る。

葵「...」

美結「...」

俯いてる美結は葵の視線を感じて

気付かぬ振りをする。

葵「美結、髪切ったんだね」

美結「う...うん」

葵「ボーイッシュで可愛いねˆ ˆ」

美結「ありがとう」

美結「(なんで嘘ついたのかは聞いてこない...)」

美結「(言い訳をしなくてもよさそう...)」

葵「...」

美結「(でも、まだ俺のこと見てる...恐い...)」

葵「...美結」

美結「?...」

葵「愛してるよˆ ˆ」

美結「...ありがとうˆ ˆ」

葵「美結は?」

美結「俺も」

葵「愛してる?」

美結「愛してるよ」

葵「ˆ ˆ」

美結「...ˆ ˆ」

美結の愛想笑いは引きつっていた。

葵「...」

美結「...」

葵「美結と逝きたいな」

美結「っ...」

さらりと言葉にする葵に血の気が引く。

美結「...行きたい?遊園地に?」

葵「遊園地も良いねˆ ˆ」

葵「でも、あの世へ逝きたいな」

葵「二人きりで...誰もいない場所へ...」

美結「...」

美結「いつかねˆ ˆ;」

葵「...我慢出来るかな」

美結「っ...」

葵「僕と美結は同時に臓器を止めて...」

葵「あの世へ逝くんだよ...一緒に...」

葵「想像したら胸がドキドキするよ...」

美結「(やっぱり...)」

美結は、マッチングアプリを使ってることが

バレてしまっているからではと怖くなる。

何としても逃げ出さなければ身の危険だと。

美結「あっ、もう帰らなきゃ...時間だから...」

葵「...そっか」

美結「ごめんね...」

葵「最後に水族館へ連れて行ってあげる」

美結「ごめん、時間がなくて...」

葵「目先だよ」

美結「?...」

葵は美結の手を引く。



来た場所は浴室だった。

葵は切ない微笑で美結を抱き締める。

美結「...」

葵「...」

10秒ぐらい経ってそっと美結を離す葵。

美結「ここが...水族館?」

葵「...」

葵「見れる場所に行けるよ」

美結「...どういうこと?」

葵「...」

美結「っ...」

胸騒ぎで全身が熱くなる美結。

葵は美結の手を握ると浴槽に近付く。

美結「待って...何するの...」

葵「大丈夫だよˆ ˆ」

葵は強引に美結の手を引く。

美結「嫌...まだ死にたくない」

葵「美結の瞳に他の人映るの耐えられない...」

美結「...」

美結「マッチングアプリのことだよね」

葵「...美結は僕のものだからね」

葵「誰かに触れられてしまう前に」

葵「二人一つになろう」

(グッ!)

美結「っ...」

葵は美結の背中と太股を抱え上げると

薔薇の花弁が浮いている満水の浴槽に入る。

(ビチャバチャビチャ...)

美結「やめて」

美結は逃げる暇もなく葵に沈められる。

美結「っ!...」

(ゴボゴボゴボ...!)

押し潰すように強く抱き締められ、

鼻と口に勢いよく入り込む水に酸素が奪われる。

身動きが出来ない美結は抵抗をやめて

意識がない振りをする。

死ぬ寸前に尽くした手段だった。

美結「...」

葵「...」

葵の力が若干弱まった時

美結は最後の力を絞って葵を振り払う。

(バシャッ!)

這うように浴槽から出ようとする美結を

背後から抱き寄せる葵。

美結「離して!」(バッ!)

力付くで浴槽から出た美結は

急いで扉を開けようとするが...

美結「っ...」

中からロックが掛けられていた。

美結「嘘でしょ...!」

ずぶ濡れのポケットに手を突っ込むが

入れていたはずのスマホがなかった。

葵「大丈夫...あの世へ逝こうˆ ˆ」

葵は美結の手を強く引く。

美結「嫌!離して!」

美結「やめて!!」

葵「逃げられねぇっつってんだろ」

美結「っ...」

(ズズズ!)

美結「いやあああ!」

再び引きずり込まれかける美結は

葵を浴槽に突き飛ばす。

(バシャンッ!)

滑り落ちた葵に乗っかる美結は、

うつ伏せにさせて頭を強く押さえつける。

(グッ...!)

30秒ぐらい押さえつけた時

葵の体の力が抜ける。

しかし、美結は油断できず更に押し付ける。

美結「......」

1分が経過して美結は恐る恐る力を抜く。

美結「...」

美結「葵...?」

美結「...っ」

青ざめる美結は急いで浴槽から出ると

葵は微塵も動かない。

美結「そんな...葵!」

(ビチャバチャ...)

助けも呼べず美結は葵を浴槽から引き揚げ

知識のない脳を使って心臓、腹部を強く押す。

美結「お願い死なないで...」

美結「いやああああああ!!」

自分の命を守る故、葵を殺してしまったと

悔やんでも悔やみきれなかった。

美結「こんな事になるなら...」

美結「抱き締められてる時...一緒に...」

美結「なんで...なんで逃げたの...」

美結「一緒に死ななかったの...」

美結「逃げて葵を殺しといて生きてんの...」

美結「っ......」

目が覚めたように

葵への愛情が戻っていると分かる。

美結「......」

自分がした行動にいてもたってもいられず

(ビチャッ...)

浴槽の水に入った美結は沈む。













────────────────────



美結「っ...」(トイレの個室から出ようとする)

(グッ)

女子生徒②「いいよーw押さえとるから」

女子生徒③「ww」

女子生徒➀「おっけ〜」(バケツに水を組む)

美結「出して...!」(扉を押す)

女子生徒③「うるせぇんだよ」(扉を蹴る)

(ボンッ!!)

美結「っ!...」

女子生徒②「ハハハww」

美結「っ...うぅ...うぅっ!」

女子生徒➀「待ってよー?」(横から上る)

葵「...何してるの?」

女子生徒②「はっ...!」

女子生徒③「来ちゃ駄目!」

美結「っ...」

葵「...」(美結の個室を開ける)

美結「あおい...っ」

葵「もう大丈夫だよ」

女子生徒➀「いっくよ〜」(バケツを逆さにする)

女子生徒③「あああっ!待って!」

女子生徒②「だめ!!葵様が入っ...」

(バッシャーーン!!)

葵「っ...」(美結を強く抱き締める)

美結「!...」

女子生徒③「きゃあああああ!!」

女子生徒②「っ...!」

女子生徒➀「えっ...!きゃあああ!ウソ...!」

(ビチャバチャビチャ...)

女子生徒②「だから言ったじゃん!」

女子生徒③「あぁあ...葵様...(泣)」

女子生徒➀「本当ごめんなさい...!!」

(ハンカチで葵を拭こうとする女子生徒達)

葵「...美結を傷つけないであげてね」

(美結の手を引いてトイレから出る葵)

女子生徒達「...」(美結を睨む)



美結「うぅ...うぅう...」

葵「美結...苦しかったね、ごめんね...」

(ハンカチで美結を拭く)

美結「あおいは悪くない...悪いのはアイツら」

葵「私がもっと早く気付いてたらな...」

美結「...でも、助けに来てくれて嬉しかった...」

美結「ありがとう、あおい...ˆ ˆ」

葵「大切な人だからねˆ ˆ」



────────────────────













美結「......っ」

涙が頬を伝う感覚に目を開けると...

ぼやけた視界に映ったのは優しく微笑む葵の姿。

美結「葵...?」

葵「...美結」

美結「...」

部屋で葵の膝に横たわって抱き締められ

布団を掛けられていた美結。

浴槽の水に沈む前の記憶が過る。

美結「っ...」

葵が一命を取り留めたと分かり涙が溢れ出る。

美結「うぅう...!」

葵「目を覚まして良かったよ」

美結「葵っ...ごめん...本当ごめんなさい...っ」

美結「俺...葵を殺したと思って...」

葵「助けてくれたんだね」

美結「もう死んじゃったと思って俺も...っ」

葵「...僕と美結は一緒じゃないと逝けない」

葵「神は僕達の離れた死を受け容れない」

葵「あの世まで結ばれているよ」

美結「うん...ˆ ˆ」

美結「葵...愛してる...」

葵「...愛してるよ、美結」

二人は強く抱き締め合いディープキスをする。

美結「...っヤバい!マジで帰らんといけん」

美結「あれ、俺のスマホ...」

葵「はい」(美結のスマホを渡す)

美結「あっ...親から不在着信が😨」

美結「え!?もう18時50分?!」

葵「急がなきゃだね」

葵「取り敢えず...服着替える?僕のあげるよ」

美結「あ...いや、それはマズい!」

美結「親が誰の服?ってなる!」

美結「同じメンズでも金の価値が違う!」

葵「でも...風邪引いちゃうよ」

美結「夏だから大丈夫」



美結の家へ向かう葵の車。

美結「...そういえば、水に沈んだ後」

美結「夢を見てたんだ」

葵「どんな夢だったの?」

美結「夢というか...中学3年生の頃の回想で」

美結「俺がトイレの個室に閉じ込められて」

美結「泣いてたら葵が助けに来て...」

美結「そしたら上からバケツの水が」

美結「バッシャーン!...って落ちてきて」

美結「葵が俺を抱き締めて守ってくれたやつ」

葵「あの日か...そんな事もあったね...」

美結「葵までずぶ濡れになったよね」

美結「ってか...俺より葵の方が濡れてた」

葵「でも、守れてなかったけどね...」

葵「美結も濡れちゃったし」

美結「...あなた、優し過ぎない?(笑)」

葵「美結にはね」

美結「そういうところに惹かれたのよ❤️」

葵「ˆ ˆ」



美結は家の近くで車を下りる。

美結「葵...寂しいよ...🥺」

美結「明日から葵また仕事だよね...」

葵「仕事が終わったら逢いに行けるよ」

美結「...仕事で疲れてるのに申し訳ないな」

葵「美結は僕にとって癒しだから...」

美結「癒してあげる❤️」

葵「いつでも逢おうねˆ ˆ」

美結「うん...愛してる...」

葵「愛してる」

美結「...」

美結は葵を抱き締めて唇にキスをする。

美結「...逝く時も一緒だよ」

葵「勿論...」

美結はもう一度葵の唇にキスをする。

葵「ˆ ˆ」

美結「///...じゃあね❤️」

葵「うん、またね」

美結「気を付けてね、ダーリン」

葵「ありがとうˆ ˆハニー」

美結「///...」

美結は更にもう一度葵の唇にキスをする。

葵「可愛いね...(笑)」

美結「えへへ❤️」

美結「今度こそ...じゃあね!」

葵「またねˆ ˆ」

美結は照れ笑いで家へ走る。



家に帰って...

美結の母「あんた!何しとったん?」

美結の母「今から探しに行こうと思っとった」

美結「ごめん...公園で遊んでた」

美結の母「何かあったんかと思ったが...」

美結「(死にかけてたけどね)」

美結の母「...服ずぶ濡れじゃん!どしたん?」

美結「雨に濡れた」

美結の母「雨降ってないよ?」

美結「一瞬降ってきたよ」

美結の母「お風呂入り!風邪引くで」



温かい湯に浸かる美結は思い出す。

美結「......」

今当たり前に息をしてるのが嘘のようだった。

葵を殺そうとした自分も悪夢のようだった。

しかし、葵の本気の力には敵わない美結。

それぐらいあの時の自分は死にたくなくて

葵が身動き出来ないぐらい潰す力があったのか。

それどころか、あの時の葵は

美結に抵抗する様子は全く無かった。

抵抗出来なかったのか、抵抗しなかったのか。

人工呼吸もせず、機械も使わず

心臓、腹部を押したぐらいで

葵を助けたのも奇跡過ぎる話だった。

美結「......」

葵はあの時、意識が無かったのだろうか。

美結「まあ...いいや!」

美結「葵との愛はまた強くなったし...❤️」



マッチングアプリを退会した美結は、

寝るまでチャットや通話で葵とイチャついた。