葵「お待たせ」

美結「...お帰り」

葵「蘭は帰ったよ」

美結「そう」

美結「...」

葵「大丈夫だよ」

美結「...行こ」

見て見ぬふりで笑顔を貫こうとする美結は

ズキズキと胸が痛む。



ラブホテルの個室に入って

ハンガーに上着を掛ける葵の背中を

生気ない目で眺める美結。

美結「...」

背を向けてゆっくりダブルベッドに座る。

その背後から近付き、抱き締める葵。

美結「...ねぇ、葵」

葵「うん?」

美結「もし、私が逝ったらどうする?」

葵「...僕も逝く」

葵「というより...君を先に逝かせない」

美結「でも、いつ何が起こるか分からない」

美結「明日事故に遭うかも」

美結「もしかしたら今日の帰り道かもしれない」

葵「...それもそうだね」

葵「逝きたいの...?」

美結の手を撫でるように指を絡ませる。

美結「...逝きたいって言ったらどうする?」

葵「一緒に逝こう」

美結「...」

振り向いて美結に向ける葵の真剣な瞳。

その時、溢れるように爆発する感情。

(グッ...!)

首筋に爪を立てるように巻き付ける美結。

背中を擦り抱き締める葵。

美結「貴方は私のものよ...」

葵「うん...勿論だよ」

美結「妹だからって容赦しないから」

葵「...」

その言葉に察した葵。

葵「ごめんね、不安にさせちゃったね」

美結「...っ」

隠していた傷が一気に切り開き、涙が溢れ出る。