───9年前───



2015年4月

始業式の朝...

中学3年生になった美結は保健室に来た。

美結「おはようございます」

保健室の先生「おはよう、よく来たね」

そこへ2年生の女子生徒も入ってくる。

彼女も同じく教室が嫌だった。

女子生徒「はぁ...気分悪い...」

保健室の先生「おはよう」

女子生徒はソファーに座るとテーブルに伏せる。

保健室の先生「職員室行って来るね」

女子生徒と二人静かな保健室で待っていると...

トマト「アイツ絶対おるぞ」

美結「っ...」

近付いてくる声は、新学期から

5R(特別学級)に移動したトマトだった。

美結は胸騒ぎがしてテーブルに伏せる。

トマト「失礼しまーす」

案の定、美結のところに来たトマトは...

(バシッ!)

強く頭を叩いてくる。

美結「うっ!...」

顔を上げると、そこに立っているのは

鋭い目で見下ろすトマトと1年生の男子生徒。

その男子生徒はトマトと同じ5Rだった。

トマト「何しょん?早よ教室上がれや!」

トマト「気持ち悪りぃ」

美結「...」

去って行くトマトの背中に唖然となる美結。

美結「(...なんで)」

美結「(美結のこと嫌いになったの...)」



そして3年生の学力テストの日...

トマトの悪態は更にエスカレートする。

保健室に一人でいる美結に近付いてきたトマト。

トマト「おい」

美結「...」

トマト「お前、昨日学校休んどったろ」

美結「...休んでないし」

トマト「ウソつけ」

トマト「逆に、学校来んな」

美結「っ...」

トマト「学校来んな♪学校来んな♪」

手拍子で貶すトマトに耐え続ける美結。

(ゾロゾロ...)

授業で体育館へ向かう1年生の生徒達。

トマト「...」

ずる賢いトマトは過ぎ去るまで様子を伺う。

トマト「先生ー」

美術の先生「何?」

トマト「みゆちゃん来とるよ」

美術の先生「先生今忙しい」

そう言い去る先生。

(♪〜)

授業開始のチャイムが響き渡り

生徒達も過ぎ去って再び二人になると...

トマト「学校来んな♪学校来んな♪」

美結「...」

そして美結は言い返す。

美結「お前がな」

美結「早よ教室上がれや」

トマト「うち5Rだし」

トマト「学校来んな♪学校来んな♪」

美結「お前が学校来んな」

トマト「...あ?」

トマトの表情が豹変する。

美結「?...」

トマト「お前...」

殺意の目で保健室に入ってくるトマトは

美結に近付く。

トマト「潰す」

美結「...」

美結はソファーから立ち上がって離れると...

(ドンッ!)

ソファーを強く蹴るトマト。

トマト「死ね!!」

その罵声は廊下まで響き渡り

通りがかった5Rの副担任と

1年生の男子生徒の耳に入る。

5Rの副担任「こら!今誰に向かって言ったの」

保健室に入ってきた二人。

トマト「だってコイツが学校来んなって!」

美結「そっちが先に言ったんじゃん」

トマト「は?ふざけんなよ?おい」

トマトは美結の保健室用紙を掴むと

美結の肩を叩く。

(バシッ!)

美結「っ...」

5Rの副担任「やめなさい」

その時、男子生徒がトマトに声を上げる。

男子生徒「やめろや!」

男子生徒「だからケンカになるんだろが!」

美結「...っ」

男子生徒「だいじょうぶ...?」

美結に優しく声を掛ける男子生徒。

美結「うん...私が悪いから...ˆ ˆ」

思ってもない発言をしてしまう美結。

トマト「死ね」

美結に中指を立てるトマト。

美結「...」

トマトを見ている美結の目は冷めていた。

5Rの副担任「死ねって言葉を言ったらいけん」

5Rの副担任「取り敢えず保健室を出よう」

トマト「やだ!」

5Rの副担任「ここにいてもいけんから」

腕を引かれ、保健室を去るトマト。

トマト「死ね!!」

廊下に響き渡る大声。

血相を変えて保健室に走ってくる先生と

新しい相談室の先生。

保健室の先生「何があったの...?!」

美結「先生...もう遅いですよ...」



美結はさっきのことを話すと、

トマトを警戒する保健室の先生。

「死ねバカ!!」

「アイツが悪い!!」

廊下に響き渡るトマトの罵声。

保健室の先生はそっと廊下を覗く。

保健室の先生「...まだ今は出ない方がいい」

保健室の先生「ほうきを持って暴れてるみたい」

美結「あの人は一体何がしたいんでしょうね」

その後もトマトの暴言は続いた。

「死ねバーカー」

美結「...」



先生達の協力でトマトを避け続ける毎日に

積み重なるように悲劇は襲う。

突然、不良の後輩男子達に目をつけられ

すれ違う度に咳き込まれては悪口を言われ...



夏休みの三者懇談の日...さらなる悲劇が襲った。

3日間祖母の妹の家に泊まっていた美結。

朝、美結の母からの電話で声色を変える

祖母の妹に何かを感じる美結。

電話を切った親戚の女性は、

美結の髪をクシで解いていつもより優しく

笑顔で誤魔化す。変だった。

迎えに来た車に乗ると、泣いている母。

美結「どうしたの...?」

美結の母「兄ちゃんが死んだ」

美結「え...なんで!?」

美結の母「自殺した」

その言葉に声を上げて泣く美結。

25年以上うつ病だった母の兄は

前日の夜、突然惨劇な死に方をした。

美結は学校に着いても泣き崩れ

グラウンドに座り込む。

美結の母「涙拭いて」(ハンカチを渡す)

静かな教室で話をする美結達と担任。

美結「...っ」(涙が伝う)

担任「...どうした?」

美結「うぅっ...」

担任「あぁ...?😅」

美結の母「すみません...ちょっと色々あって...」

美結の母も涙を堪えられなかった。



美結の母「ばあちゃんは話を聞いて泣いとった」

美結「...」

美結の母「"美結には話さん方がええ"」

美結の母「"まだ中学生だから"って言っとった」

美結の母「でも、美結は最近"死にたい"って」

美結の母「言うじゃろ、だから」

美結の母「命の大切を教えようと思って」

美結の母「だから、あんたにも話した」

美結「...」



その後、後から炙り出される闇に

壊れて言い合いになる家族と親族...

美結「もうやめて!!」

叫ぶ美結に黙り込む全員。

親戚の女性「やめよう、子供の前で」



捻くれていく美結は心ない発言をして...

(バチンッ!!)

美結の頬を強く叩く母。

美結「うぐっ!...」

美結はカッターナイフを手にして

学校で遺書を書くまでに至った。



美結「...先生」

美結「生きる意味ってあるんですかね」

相談室の先生「うん」

相談室の先生「生きてたら楽しいこともある」

美結「どうせ死ぬなら意味ないと思います」

相談室の先生「だから今を楽しむんじゃん」

美結「...」

美結「生きてたらみんなに迷惑かけるなって」

相談室の先生「死ぬ方が迷惑掛けるよ」

美結「なんでですか?」

相談室の先生「処理とか」

美結「...」



美結「死んでも誰も悲しまないよね」

美結「はぁ...死にたい」

美結「生きても辛いだけ」



「グダグダうるせぇなあどうしようもねぇだろ」

「病んでるアピール=かまちょ」

「いい加減キモいw」

「私はゴミ箱じゃない」



弱音に離れていく友達。

「......」

夕方、公園に座り込む美結の前に

姿を見せたのは...

葵「ご機嫌よう」

美結「...っ、あおいちゃん?!」

驚いて立ち上がる。

それは終業式の日以来の再会だった。

葵「お久し振り」

美結「って...身長伸びた?!」

美結「みゆより高くなってる!」

葵「急に伸びてたんだ」

美結「えっ...あんなに小っちゃかったのに...」

葵「あはは...(笑)」

美結「またあおいちゃんと会えてびっくり」

葵「...散歩してたら、みゆちゃんを見かけて」

葵「何かあったのかなって...」

葵「私の気のせいだったらごめんね」

美結「...」

美結「みんな、はなれちゃった」

葵「...ケンカしちゃった?」

美結「いや、ケンカはしてない...」

美結「みゆがネガティブなこと言うから」

美結「うっとうしいって...」

葵「...」

葵「苦しかったね」

美結「っ...」

葵「私で良ければ話を聞かせて...?」

美結「......」

また暗い話をしてしまえば離れられるのでは...

その不安も読み取るように葵は言う。

葵「今は誰のことも怖いよね」

葵「でも...私はみゆちゃんから離れないよ」

美結「...」

美結は葵を信じて全てを話す。

葵「......」

葵は自分の痛みのように悲しい目になっていた。

美結「...もう毎日死のうかなって考えてる」

生気のない目で吐き出す。

(サッ...)

美結の手を取る葵。

美結「っ...」

葵「私はみゆちゃんに生きて欲しいと思ってる」

葵「...お願い」

美結「......」

美結は感情が戻ったように涙が溢れ出る。

美結「っ...うぅう...」

葵は座り込む美結を抱き締める。

葵「...ˆ ˆ」

美結「はなれないで...一人にしないで...」

葵「離れないよ」

美結「うぅっ...うぅう...!」

号泣する美結の背中を優しく撫でる葵。



美結「ごめん、門限だから帰らなきゃ...」

葵「うん」

美結「ありがとう...あおいちゃん」

葵「無理しないでね」

美結「うん...あっ、LINEってやってる?」

葵「ごめん...私の携帯ではできないんだ」

美結「えっ、マジか...」

美結「じゃあ電話番号は?」

葵「大丈夫だよ」

美結「やった!」

美結はガラケーで葵の電話番号を撮影して

葵は紙に美結の電話番号をメモした。

葵「苦しい時はいつでも電話していいよ」

葵「出られなかった時は折り返し電話するから」

美結「じゃあ楽しい時も電話していい?」

葵「いいよ」

美結「ありがとう!」

美結「じゃあ、ばいばい!あおいちゃん!」

葵「気をつけて帰ってねˆ ˆ」

美結「...」

美結「はぁ...」

葵「...?」

美結「あおいちゃんと同じ学校だったらなぁ」

美結「毎日楽しいのに」

美結「...ばいばい!」

美結は走って帰っていった。

葵「...」



美結にとって葵は唯一

精神的に寄り掛かれる存在だった。

しかし、距離は近いようで遠いと感じた。

美結「...」



夏休みが終わって...

美結は、やっぱり学校に戻って

最後の1年頑張ろうという気持ちになった。



一週間後...

美結のガラケーに葵から着信が掛かる。

美結「っ...!あおいちゃん!」

嬉しくて電話に出る。

美結「もしもし?」

葵「もしもし、葵です」

葵「電話して良かったかな...?」

美結「うん!」

美結「ごめん...前に電話するって言ったけど」

美結「なんかできなかった...」

葵「大丈夫だよˆ ˆみゆちゃんがしたい時で」

葵「あれからどう...?」

美結「今週フリースクールから学校に戻った!」

美結「中学校生活ラスト頑張ろって思ったから」

美結「あ、戻るって言っても相談室にだけどね」

葵「えらいよ...みゆちゃんˆ ˆ」

美結「うん!えへへˆ ˆ」

葵「私...みゆちゃんと...同じ学校に」

葵「転校できたらいいな...って考えてる」

美結「えっ!来て!」

美結「あおいちゃんいたらもっと頑張れる!」

葵「じゃあ...家族に相談するね」

美結「〇〇中学校だよ?待ってるからね!?」

葵「うんˆ ˆ」

美結は楽しみでならなかった。



その夜...

葵は思いきって父に転校について相談する。

葵の父「...何故、市立に行きたい」

葵の父「格を下げる理由がない」

葵「親しい友人が通う学校で...」

葵の父「何処の誰だ」

葵の父「そんなことをして何になる!」

葵「...」

予想してなかった返事に真っ白になる葵。



翌朝...

休日、美結は葵に電話を掛ける。

美結「もしもし?あおいちゃん!」

美結「家族に転校のこと話した?!」

葵「...その件...なんだけど」

美結「?...うん」

葵「...反対されちゃったんだ」

美結「えっ...」

葵「ごめんなさい...私の考えが軽率だった」

美結「...」

葵「本当にごめん...」

美結「なんで...なんで反対されちゃったの...?」

美結「やっぱりみゆのこと嫌ってるんだ...」

葵「そうじゃないよ!」

葵「...家が厳格なんだ」

美結「げんかく...?」

葵「厳しい...ってこと」

美結「...」

美結「あおいちゃんの学校とみゆの学校って...」

美結「何が違うの...?」

葵「...」

美結「あおいちゃんの学校もう一回教えて?」

美結「なんて名前?」

葵「ネリネ学院」



美結はタブレットで葵の学校名

"ネリネ学院"を検索すると

画面に表示されたのは...

美結「?...」

見たことがない外観の校舎。

美結「えっ...幼小中高一貫...?」

ひと目で一般的な学校ではないことが分かる。

美結「......」

葵が反対されたのも理解できた。



葵「...」

美結の悲しい声を思い出す葵。

"なんで...なんで反対されちゃったの...?"

"あおいちゃんとみゆの学校って...

何が違うの...?"

葵「......」

葵は諦めきれなかった。

葵の父「またその話か」

葵の父「あの学校について調べたが」

葵の父「評判が悪いと知って尚、縁はない」

葵「無理なお願いだとは存じております」

葵「しかし、私は...友人を救いたいのです...」

葵の父「...どういうことだ」



学校の帰り道...

美結は介護施設の前に立ち尽くす。

葵に電話をすることすら苦しくなっていた。

美結「(...なんでこんなに苦しいんだろう)」

美結「(同じ学校じゃないってだけで)」

美結「(初めて出会った時から...)」

美結「(もどかしくてイライラして...)」

美結「(そんな感情持ったことない...)」

美結「(この気持ち...何...?)」

美結「っ...」

美結「やめて...」

高鳴る鼓動。

考えを打ち消そうとすればするほど

胸が締め付けられる。

美結「...」

(ガチャッ)

美結「っ!...」

開いたドアから出てくる女性従業員。

美結「(...あおいちゃんじゃなかった)」

美結「(今日来てるのかな...)」

美結「(っ...考えるな)」

美結は速やかに去った。

従業員「...?」



翌日...

介護施設に来た葵。

従業員「...あっ!葵ちゃん」

葵「はい?」

従業員「昨日ここの入口にね」

従業員「中学生の女の子がいて...」

従業員「多分...葵ちゃんの友達だったと思う!」

葵「っ...」

従業員「急いでどこか行っちゃったけど」

葵「...」



夕方...

いつもより早くボランティア活動が終わった葵は

介護施設の外に立っていた。

従業員「あれ?葵ちゃん帰らないの?」

葵「休憩して帰ろうと思いまして」

従業員「そっか、気を付けて帰ってねˆ ˆ」

葵「はい、お疲れ様ですˆ ˆ」



家に帰って宿題が終わった美結は

ベッドに横たわって3DSを手に取る。

美結「...」

視界に入るガラケー。

美結「(いっそ見ないように隠してしまおう)」

美結「(...最後に見とくか)」

ガラケーを開けると...

美結「...っ」

画面に表示されてる不在着信。

その相手は葵だった。

美結は急いで電話を掛ける。

美結「もしもし?」

葵「もしもし、ごめんね...忙しかったかな」

美結「宿題してた...ごめん」

美結「あおいちゃんボランティア終わったの?」

葵「今日はいつもより早く終わったんだ」

美結「えっ...じゃあ今から...」

美結は時計に視線を向けると

PM18:00を過ぎていた。

美結「会えないよね...」

葵「少しだけなら会えるよ」

美結「本当?」

葵「うん、みゆちゃんは大丈夫...?」

葵「外は暗くなってきてるけど...」

美結「ママにナイショで家出る!」

美結「だから今から介護施設の前に来て!」

葵「...分かったˆ ˆ」

美結は思いもしていなかった。

葵が介護施設の外で待っていたとは。

しかし、美結に気を使わせたくない葵は

何も言わなかった。



数十分後...

介護施設に近付いてくる自転車の光。

美結「あおいちゃん!」

葵「昨日は来てもらったのにごめんね...」

葵「欠勤だったんだ」

美結「?...」

葵「従業員の方から話を聞いてね...」

美結「あっ...大丈夫だよ!」

美結「今あおいちゃんと会えたから」

美結「...あれ?制服?」

美結「まだ着替えてなかったの?」

葵「ああ...うんˆ ˆ」

美結「そっか」

葵「...」

美結「...」

美結「最近、仲良くなった新しい友達とね」

美結「明日...公園でみんなで遊ぶんだけどさ」

葵「うんうん」

美結「あおいちゃんも一緒に遊べる...?」

葵「うん!明日は予定ないから遊べるよ」

美結「やった!」



翌日...

葵への本当の気持ちが解った美結は想いを伝え、

二人は恋人になった。



葵「みゆちゃんと同じ学校に行けるよ!」

美結「えっ!?ウソ!許してくれたの?!」

葵「うんˆ ˆ」

美結「やったー!」

美結は勢いよく葵に抱きつく。

(ギュッ!)



「葵様が転校?!」

「嘘でしょ?どうして...」

「信じられない...」

突然の葵の転校に悲しみ涙する女子生徒達。



そして葵は美結と同じ中学校に転校して...

「31Rの転校生の宮林さん美人よな」

「ナンパしよーぜw」

「お嬢様学校から来たんだって」

「えっ、ヤバ!」

「大人しそうなのに運動神経いいんだって〜」

「勉強もできてかしこいらしいよ」

モテモテの葵に独占欲が強くなる美結は

時々、不安になる。

こんな優秀な葵が正反対の自分とそぐあうのか

本当に恋人として見てくれているのか...



学校が終わって一緒に帰る美結と葵。

美結「...本当はあおいと同じように」

美結「教室入りたかったけど...」

美結「やっぱり久しぶりに教室に戻ったら」

美結「怖くて動けなかった」

葵「うんうん...」

美結「だから...相談室に戻ったの」

葵「頑張ったね、みゆ」

美結「うんˆ ˆ」

「...あっ!」

「葵様!」

「えっ!本当に?!」

美結「?...」

背後の声に振り向くと、

近付いてくる三つ編みの女子中学生3人。

そのオシャレな制服に見覚えがあった。

美結「(もしかして葵の学校の...)」

女子➀「葵様ー♡探してたのよ!」

美結「っ...」

女子②「市立の中学校に転校したのよね...」

葵「わざわざごめんね...」

女子②「可哀想に...そんな制服で」

女子➀「葵様には似合わない...」

女子③「でも葵様ならどの格好でもお似合いね」

女子達「ねー♡」

美結「...」

女子達「...」

女子達は美結を上から下まで見てくる。

美結「(なっ...何だよ...)」

女子➀「ふふふ...(笑)」

女子②「...こんな子と歩いて」

女子②「お恥ずかしいでしょ?」

女子③「地味過ぎて考えられない...」

美結「っ...」

葵「...」

女子➀「さて、葵様を見つけられたし...」

女子➀「帰りましょ」

女子②「また今度会いに行くからね!」

女子③「ご機嫌よう♪葵様♡」

葵「ありがとう、ご機嫌ようˆ ˆ」



女子達が去って...

美結「...」

葵「...気にしないで」

葵「彼女達の今の言葉は私も許せなかった」

美結「...本当にいいのかな」

葵「?...」

美結「本当にみゆなんかでいいの...?」

葵「え...?」

美結「みゆみたいにドジで地味な子...」

みゆ「あおいと合わないよね」

葵「...」

葵は美結を抱き締める。

葵「私は、みゆの全てが好き」

葵「だから自分らしくいてˆ ˆ」

美結「...あおい」



葵はボランティア活動や家庭の行事で忙しく

学校に行けない日もあった。

その日は相談室で一人葵を想っていた。

美結「(...今日もあおいちゃん休みか)」

「はい、これ」

美結「?...」

振り向くと、そこにはトマトがいた。

美結「っ...」

トマト「忘れ物」

美結「あ...ありがとう...」

あの時の修羅場が遮る。

トマト「昼休憩遊ぼ!」

美結「っ...うん!」

トマト「ˆ ˆ」

美結「(また友達に戻ったの...?)」

美結は嬉しかった。



昼休憩になると、

トマトは美結をトイレの個室に連れて行く。

トマト「久々にアレやろうや」

美結「...もういいよ」

また弄ばれる。

そう思った美結は去ろうとすると...

トマト「こちょこちょゲームのことだし!」

美結「...」



しかし、トマトの気分屋は相変わらず...

トマト「うわっ!びっくりした!」

トマト「怖いからそこに立つのやめてくれん?」

美結「...」



後輩の不良男子達の態度も相変わらず...

男子生徒「...」(美結を通せんぼする)

美結「っ...」

美結「...」(避けて通る)



美結がいじめを受けてる話を聞いてる葵は

極力離れないように傍に居てくれた。



翌年...

美結は再び病んでしまう。

葵が学校に来ていない日には...

男子生徒②「それでさ...」

男子生徒➀「うん」

仲が良い男子生徒2人の会話にもイライラして...

美結「...あぁもう!!」(立ち上がる)

(ボンッ!)

数学ドリルにシャーペンを投げて

相談室を出る美結を唖然と見ていた。

保健室の先生「すみません...美結さんが朝から」

保健室の先生「トイレに閉じこもって...」

急遽、先生達と美結の母は

心配して美結のところに行った。

英語の先生「亡くなってる...?」

涙ぐむ女性の先生の声に

やっとトイレの個室から出た美結の手には

カッターナイフがあった。

保健室の先生「っ...!」

青ざめる保健室の先生は急いで

美結のブラウスの袖を捲る。

保健室の先生「傷つけてない?!」

保健室の先生「良かった...」



それから一人で行動する美結を警戒する先生は...

美結「...」(相談室を出る)

相談室の先生「〇〇先生!」

相談室の先生「ついて行ってください!」

他の先生に監視させる日もあった。

何気なく拳を手に当てるだけで

先生に心配されるようにもなり...



学校以外でも、地面に横たわったり

声を荒げ車の窓を殴ったり

癇癪を起こすと悪魔のように凶暴化して

避難される美結。



高校見学に行った日の夜...

飲み屋で酒に酔いつぶれ、

兄の死を思い出して泣く母に美結は

「前から思ってたんだけど、

そういう話もうやめろよ!

悔やんだってもう戻ってこないんだよ!!!」

と店内で叫ぶ大声がマイクに響き渡った。



壊れた精神を癒せるのは、

葵以外いなかった。



塾にも行かず...

ガラケーの着信もメールも開かず...

深夜、家を抜け出して公園のトイレの個室で...

美結「あおい...大好き...」

葵「みゆ...大好きだよ」

(カッターナイフで腕に傷を入れる)

美結と葵は、お互いの心の

光の存在になったのだった。



色々な人達に裏切られて人間不信に至った美結は

葵のことだけ信用できたのだった。