体育館に続々と新一年生が集まる最中、私とクラスの違う鞠は緊張と人に酔ってしまった様子だった。
ガヤガヤとした生徒達の喋り声と、ほとんど周りに知る人がいないという圧は、気分を悪くしてもおかしくなかったのだ。

しまったと思った私は、すぐに鞠のところに向かう。
そして担任の先生に伝えて、保健室に連れて行こうと体育館を出ようとしていた。


その時……


「あれあれ、どっこ行くのー? 今からオリエンテーションだぞー?」

「え! この子ら入学式で話題になってた双子じゃね!?」

「やっぱ近くで見ると可愛い〜〜俺らと友達にならない?」


目の前を新一年生と思われる男子生徒三名が立ち塞がった。
一瞬でめんどくさそうだと悟る。
私は早々に鞠を保健室に連れて行きたかった。


「姉が具合が悪いので保健室に」


そのためとても早口になる。
鬱陶しいという感情も声に出ていたかもしれない。
しかしそんなことは微塵も感じないのか、彼らはあっけらかんとした態度で喋り始めた。


「だったら俺らも付き添うよ! オリエンテーションなんて一緒にサボろうぜ」

「は……?」

「あ、ねぇねぇ、連絡先教えてくれない? 今度一緒に遊ぼうよ」


それからどこどこが美味しい店だとか、どこどこのカラオケが安いとか、今はどうでもいいことばかりが耳に入ってくる。
話が通じず苛立ちが募っていく。