「それもごく稀に言われる」


そう悟ったように焦る反応が面白くて、彼の手の力が抜けたように離れた瞬間、また喋り出してしまう。


「じっちゃんのなにかけ……うぐっ」

「おい、わざとか?」

「ひひひひっ」


やっぱり面白くて、口を覆われているというのに私は笑っていた。
普通は初対面の人に顔を触られるなんて嫌なはずだけど……

私が笑っていると気味悪がられたのか、すぐに彼の大きな手が離された。


「じゃあはじめちゃん、だ?」

「馴れ馴れしいな」

「はじめちゃんは何で私のこと見て驚いたのさ?」

「なんでって……髪が」

「あ、髪? こっちのほうが動きやすいし、スッキリしたくて昨日切ってきたんだけど」


やっぱ切りすぎたかな……?
自分の短くなった髪を触って目で確認する。
すぐ伸びるし、バッサリいっちゃったほうがいいと思ったけど、それにしてもそんなに驚くことだろうか。


「……バスケ部は? なんで今?」

「はじめちゃん、なんか怒ってる?」

「怒ってねぇ。けど、タイミング的に……」


そこまで言って、口を結ぶ。一瞬彼の眉間に力が入るのが見えた。
口では怒ってないと言っても、本音はたぶん怒ってるんだ……
理由はおそらく……


「もし私がこんな時期に入ってきて、中途半端だってイラつかせたんなら謝る。必死に毎日練習してる人にとっては勝手で迷惑な話だとおも」

「違う!」

「!?」


言葉を遮られて、余計に怒らせてしまったと思った。
しかし彼は切なそうに眉間に皺を寄せている。