「まじかー…フられるために告る人って現実にいんだね……」

「うん、ここに」


クラスの友人である優菜に、さっきの出来事を報告する。
私のたった一度の初恋はあっさりフラれ呆気なく終わったのだ。

彼の名前は同じ一年の柳沼徹(やぎぬまとおる)
私は敬意を評して"ヤギさん"と呼んでいる。
迷いなく私の告白を断ったヤギさんにまた、彼の想い人である鞠のことが羨ましく思えた。

それと同時に、好きでもない人にはあんなに潔くキッパリと断ってくれるのなら、安心して鞠を任せられる、とも思う。


「まあねえ……二人が両想いってわかってるのに、それを割り込むように好きでいるってのは、相当きついよね……自分じゃない子に片想いしてる人を好きでいる、ってだけでも辛いのに、おまけに繭はライバルが鞠ちゃんなんだもん」


ライバルと言えるほど争ってもいなければ、それ以前に敗北決定だったけどさ……

鞠は私の双子の姉である。本名は小野寺鞠(おのでらまり)
そして私が妹の小野寺繭(おのでらまゆ)
あだ名は"でまりん"と"でまゆん"。
どこかにいそうなキャラ名っぽい。

確かに顔は間違えられるほど似ているが、性格や喋り方、仕草や格好などが違うので、最近では周りからも判別しやすいはずだ。