「そんな泣くと、あの絵本の双子みたいになれないんじゃなかったっけ?」

「ふ…うぅ……っ、繭…ごめん……」

「ううん。ヤギさんになら安心して鞠を任せられるし、これからはバスケに専念できて好都合なんだけど!」


既にヤギさんにフラれてる私のことなんか鞠に気にしてほしくなくて、さっさと両思い同士くっついてほしくて、冗談混じりに笑った。


「だから今から伝えに行って? 今私に言ったこと、ヤギさんに」

「いま、から……?」

「まだ柔道部で稽古してる時間だし、やっぱ気持ちはその時に伝えないとさっ! ヤギさん今頃ショックで投げ倒されてるかもだし!」


私は鞠をイスから立たせるとそのまま軽く背中を押す。


「幸せになってくれないと許さないんだから」

「っ……ありがとう、繭」

「うん。行っといで」


覚悟を決めたような表情になった鞠の背中を見送りながら、理由もわからない行き場のない涙が、頬に一滴だけこぼれ落ちていた。────