「……ぁ……っ、……ッ…、……ぅ、」



それは、私の首にかけられた輝きを見つけた瞬間の反応だった。

ぽろりぽろりと、大粒になって彼の頬を幾つも伝ってゆく。


歯がゆくて、緊張もあって、焦りや圧迫感、動揺と困惑、そして恐怖。


どうして思い出せないんだ───と、叫んでいるようにも見えた。



「…ぼく………っ、……お…れ、」


「…うん」


「そ…れ……っ、……ぁぁぁ……っ」



もしかするとぜったい忘れたくないものだったのかもしれない。

この指輪だけは。
このダイヤモンドに懸けた想いだけは。


駆けつけた主治医たちは彼の容態を慎重に確認しながらも、私たちの姿を黙って見守っていた。



「大丈夫だよ。…だいじょうぶ」



だいじょうぶ。

泣かなくていいんだよ、海真くん。


私はここにいるから、あなたを置いてはどこへも行かないから、泣く必要なんかないの。


ここに私と海真くんがいれば、またいっしょに手を繋いで歩けるから。



「…はじめまして、海真くん」



この「はじめまして」が、いつか「おかえり」になるよ。

ぜったい、なるよ。