「これって……アパート…?」
「そう。おれの家。ほんとは2階が良かったんだけどね。1階の、しかもど真ん中。いちばん気ぃつかうとこ」
そこは繁華街の外れ。
さっきのバーからどのくらい歩いたかは、考えていなかった。
外観は数年前に1回リフォームされたが変化は分からないらしく、築年数はだいぶ経っているように見える。
このアパート1戸と比べても、私の家のほうが比べるまでもなく大きい。
「散らかってるけど。どうぞ入って」
そうは言われたけれど、私の腕は離されないのだから一緒に入るしかない。
ふたりでギリギリサイズな玄関に入ってドアが閉められて、静かに鍵をかけられたところでようやく手は離された。
入ったところのすぐにある、洗濯機。
「か、帰るんじゃ…」
「そうなんだけど、もう少し時間はあるし、お腹空いてんじゃないかなって。だって何も食べてなくない?…あ、パーティーで食べたか」
「……ううん。なにも食べてない…です」
「でしょ?とか言って、冷蔵庫カラッポだったら最低なんだけどおれ」