「────ひゃっ!」



とつぜん頬っぺたに冷たいものが当たって、肩が跳ねた。

どのくらいここから夕日を見ていたんだろう。


手にしていたらしい缶ジュース、渡してくれたのは店長だった。



「店長は玖未さんのこと、好き?」


「…いきなりだな」


「それくらいじゃないと答えてくれないと思って」



タイミングが掴めないひと。

というのが、このひとの第一印象だった。


冷たそうに見えて実は海真くんとコントのような会話を繰り広げたり、わりと聞いているとツッコミの立ち回りが多かったり。


怖い人なのかなって思っていたけれど、ぜんぜんそんなことはなく単純に人見知りなだけだった。



「……なら、賭けてみるか」


「賭ける…?」


「海真が意識を戻したら、俺は玖未のことを真剣に考える」


「……………」


「それくらいがちょうどいいのかもな。俺のような人間は」



うん、いいかもしれない。

自分ひとりで決めることが難しいなら、いっそ何かに頼って無理やり理由にしてみるのも。