海真side




「彼女さんにプレゼントですか?」


「……えーっと、…婚約指輪……を」


「まあ!おめでとうございます」



ここで照れたって仕方ないってのに。

普段ならぜったい入らないような高級感あふれるジュエリーショップには、やっぱりこの普段着はナンセンスだった。


ののちゃんには少し誤魔化しながら店長からお使いを頼まれたとか、そんなことを言って今日。



「………35万……、」


「そちら本来であれば倍のお値段がするのですが、当店限定でそちらの価格で販売しております」


「……へえ」



正直ダイヤモンドとか、まったく分かんない。

おれ指輪もしないし、せめて付けている銀のドロップピアスは姉ちゃんが生前にプレゼントしてくれたものだ。


それっぽい反応でショーケースを眺めているが、本当はかなり緊張していた。


緊張なんか滅多にしない主義だってのに。

でもこれが男が一世一代に味わう緊張のひとつなのかなって思ったら、悪い気はしない。