「……こちら、たぶんあなたに贈ろうとしたものなんじゃないかと…」



ひとりの看護師さんが涙声で私に差し出してきた、とても小さな箱。

ここには何が入るんだろうと思うくらい、小さな箱だ。



「…衣服のポケットに、入っていました」



そういえば少し前から私の左手の薬指をよく触ってきたよね。

「最近ハマったんだ」とか、照れくさそうによく分からないことを言って。


震える手で、パカッと開ける。




「───────………」




それは今まで見てきたアクセサリーや宝石のなかで、いちばん綺麗で悲しいダイヤモンドが埋め込まれた指輪だった。


これを買いに行った帰り道だったんだ。

これを私に届けたくて、しばらく歩いたんだ。


苦しくて痛いなか、頭から血を流してお腹を押さえながら、海真くんは歩いたんだ。



「ごめ…、ん……っ」



できないことばかりだったよね。

何度も何度も何度も、海真くんは私との幸せを掴もうとしてくれたのに。