『乃々ちゃん…!!いまっ、あたしのほうに電話…っ、カイマがっ、シュウさんはもう病院に……!!救急車がね…っ、道で……ッ』



こんなにも聞き取れなかった言葉は初めてだった。

ただもう、説明する側にもそんな時間も余裕もなかったのだろう。


そのあと冷静さを取り戻した玖未さんは、こう言った。




『すぐに病院だよ、乃々ちゃん……、海真が…、…海真が…………刺された………』




何者かにナイフで腹部を刺されて架道橋のトンネルに倒れていたところを、通行人に目撃されたと。

すぐに救急車が呼ばれ、病院に運ばれたものの意識はない。


その目撃者がたまたまバーの常連さんだったらしく、まずは店長さんに連絡が行ったのだと。



『あたまもケガしてて……、かなり…、ひどいって……っ』



スマートフォンが手からスルリと落ちた。

朝はすごくいい天気だったのに、今はそんな面影すら映さない大雨。


怪しい人物の目撃もされているため、通り魔というよりは暴力団などから暴行を加えられた可能性が高いと、警察は見ているらしい。