急に出てきて、嵐が去っていくように戻っていった。

もしかすると私たちを仲直りさせるためにわざと出てきてくれたのかもしれないと思った私と、瞳を伏せた海真くん。



「なんもないよ、おれんち。狭くて古くて壁も薄い……恥ずかしい城だ」



そんなことない。

ここが私のお家。
ここが私の大好きな場所。


何よりも安心できて、何よりも温かい場所。


私が案内するように玄関内に入って、ガチャリと鍵を閉める。



「ほんとなんもないよ。…なんも……なくてさ」



まるで何もないことを、今になって惨めだと思っているみたいだった。

涙で返すしかできない自分が悔しい。


あんなにもひどいことを言っておいて、ひどいことをしておいて、それでも私がここに来たら前のように「おかえり」って。


そんな海真くんは、ここまで悲しそうな顔をしているというのに。